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2022年9月27日、デロイトトーマツコンサルティング合同会社にご登壇いただき、SAPとの合同Webinar「SAP SuccessFactors Day ~人的資本最大化のためのマネジメントとは?~」を開催しました。

セミナーでは、2023年に政府による情報開示の義務化が予定されている人的資本をテーマに、重要な資本である「人財」の要員計画や配置計画をどのように実施するべきか、その考え方や実現を支えるテクノロジーのご紹介を行いました。

本稿では、セミナー当日の内容をハイライトで、ご報告いたします。当日の録画はこちらからご覧いただくことができます。

“人的資本経営”時代の要員・人件費マネジメントと、その実現にむけて

デロイトトーマツコンサルティング合同会社
ヒューマンキャピタル 執行役員 パートナー 山本奈々氏
ヒューマンキャピタル ディレクター 高山 俊氏

定義が曖昧になりがちな人員計画

各社の中期経営では、昨今「グローバル人財の早期育成」や「DX人材の育成」がキーワードとして登場するケースが増えたが、大きな方向性を示すに留まり、いつまでに・具体的なスキルや経験(スペック)を持った人が何人必要なのかといった具体性を持って描かれていないのが実情ではないか、と山本氏は語りました。

また、クライアント各社からは、自社の人数が適正なのかわからない、要員計画作成にあたり各部門の必要人数を集計するが、その計画値が適正か判断できないという相談も増えているようです。

環境の変化が益々激しくなり、労働人口の減少が進む中、経営戦略の担い手となる人的資本および要員計画について今まで以上に根拠を持って明確に、そして丁寧に策定していくことが求められています。

要員・人件費マネジメントを検討する際のポイント

経営計画の実現に向けて人事施策を実施した場合、その効果が見えるようになるには5年、10年といった中長期的な視点が必要である点も考慮しておく必要があります。つまり、3か年や5か年で作成されることが多い中期経営計画よりも長いスパンで採用・育成に取り組むことが求められるのです。

また、現行業務に必要なスキルを持つ人材を採用した場合、それらの人員人件費は固定費として抱えることになります。採用時には、し、短期的な解決ではなく中長期的な視点で要員計画を立てていくことが重要であると語りました。

要員や人件費マネジメントについて議論すると、いかに人件費を削減するかといった方向で話が進みがちです。人的資本経営時代の要員計画においては、現状抱えている人材をどのように活躍させるかというリソースシフトの考え方もポイントになります。

図1 リソースシフトの考え方
図1 リソースシフトの考え方

 
既存領域において、組織が成熟し少ない人員数で同じ売上を達成できるようになったのであれば、現有人材を成長領域に配置することで、全社視点で考えると同じ人員数でより高い売上を達成することができるようになります。

しかし、効果的なリソースシフトを行うためには根拠が必要であり、その例として生産性KPIが活用できると山本氏は語りました(図2参照)。

図2 生産性KPIの例
図2 生産性KPIの例

 
図2に示すように、人件費効率や一人当たり生産性といった生産性KPIを部門ごとに算出し、全社単位で必要な人件費や人数を見積もることで、人の計画を曖昧なものにせず、人という有限なリソースを最大活用することができるとデロイトは提唱します。

また、要員計画を考える際は、要員数に加えて、どのような知識・経験、コンピテンシーを持っているのかという人の質を考慮することも重要です。ニーズに基づいた人員配置の優先順位付け、およびビジネス領域の変化に伴うリソースシフトや育成といった人材ポートフォリオの転換という一連のプロセスが、要員人件費計画の策定およびマネジメントの流れとなります。

具体的な手法について

後半では、要員・人件費マネジメントの具体的な手法を高山氏より紹介しました。

人員数、人件費計画の策定において各部門からの必要人員数を全社人事担当が取りまとめる場合、声が大きな部門の意見を優先してしまう事例も多いと言います。このプロセスを進めるポイントは、どのような数字を定量的な根拠とするのかを設計時に決定し、そのKPIを毎年取得して部門の数字を全社のキャップにあてながら検証を繰り返すことだと語りました。

図3 人員数・人件費計画のフォーマットイメージ
図3 人員数・人件費計画のフォーマットイメージ

 
高山氏からは、人員数・人件費計画のフォーマット例が紹介され、グラフと、グラフから読み取ったことをテキストに残すこと、そしてKPIの設定が重要であると解説しました。また、スナップショットでなく、過去から現在、現在から将来のデータを参照することで、人材投下の参考値として活用することができると語りました。

セミナーでは、上記フォーマットをSAP Analytics Cloudを用いることでシステム化し、全社人事が人員計画の推移や各指標のデータ分析をダッシュボード上でわかりやすく可視化できるイメージを紹介しました。業務を支えるテクノロジーの進歩により、今までExcelでなんとかやり切るしかなかった作業がデータとして可視化されるに留まらず、採用や育成といった各タレントマネジメント施策との連携性が圧倒的に高まりました。

高山氏は、これらの要員人件費マネジメントの考え方やテクノロジーを使って、経営の高度化につなげてほしいと締めくくりました。

人的資本の最大化に寄与するSAPソリューションのご紹介

SAPジャパン株式会社
人事・人財ソリューションアドバイザリー本部
ソリューションスペシャリスト 中園実央

人的資本経営の実践に求められる3つのステップ

昨今、人的資本経営への注目度がますます高まっているものの、取り組みたいが方法が分からない等、実践に困っている企業様が多くいらっしゃいます。

中園は人材版伊藤レポートの内容を例に挙げ、人的資本経営の実践には以下の3つのステップが求められると語りました。

  • 経営戦略や目指すべきビジネスモデルを実現する上で必要な人材と現在保有している人材のギャップを把握する
  • 人材ギャップを埋めるための施策やアクションを実行する
  • 施策効果と社員が十分に能力を発揮するために重要なエンゲージメントレベルを把握し、軌道修正を図る

本セッションでは3つのステップをさらにアクションとして具体化し、どのようにデジタルに実現できるのかを紹介しました。

ステップ1 現有戦力と必要人員のギャップの可視化

ステップ1の実践にはまず、現時点の労働力を可視化する必要があります。組織横断で社員の能力保有状況を確認できるダッシュボードを活用し、どのような能力を持った社員がどこにどのくらいいるのか俯瞰してみることができる点を紹介しました。

中園は「現状を確認した後、次に求められるアクションは、要員計画である」と、語りました。将来の事業戦略に基づいて、どういった人材がどのくらい必要なのか、ダッシュボード(図1)上に入力します。

現状把握をしつつ、今後必要な人材の需要をインプットすることで、人材のギャップを捉えることができます。

図4 要員計画のダッシュボード
図4 要員計画のダッシュボード

 

ステップ2 人材ギャップを埋めるためのアクションの特定と実行

ステップ1で現状と計画のギャップを確認した後、ステップ2ではそのギャップを埋めるためのアクションを実行していきます。そのアクションとして、まず人材を再配置することでギャップを埋めていく際に、異動案を作る場面で活用いただけるレポート(図5)を紹介しました。

このレポートではポジションに求められる能力レベルと現在の社員の能力レベルをベースに、マッチ率の高い社員を見つけることができます。こちらを参照しながら、異動候補としてどの社員が良さそうか、データに基づいた検討を行うことが可能です。

図5 ジョブと社員のマッチ率レポート
図5 ジョブと社員のマッチ率レポート

 
次のアクションとして、社員を計画的に育成することでギャップを埋める観点で、後継者計画を紹介しました。

SAP SuccessFactorsの後継者組織図(図6)では、各キーポジションの後継者準備状況を瞬時に把握できます。社員の能力やキャリア志向など、後継者の検討時に判断材料にしたいデータを加味しながら、選抜を行うことが可能です。また、後継者としてノミネートした後、計画的に後継者の育成をすすめていくための研修割当もご覧いただきました。該当ポジションに求められる具体的な能力を伸ばすために助けとなる、研修コンテンツをシステムが提示してくれるので、簡単に割り当てることが可能です。

図6 後継者組織図
図6 後継者組織図

 
ここまで、事業成長のための社員の再配置や後継者の育成など、企業目線でアクションをみていきましたが、「社員に意欲をもって取り組んでもらうために、社員の志向も鑑みる必要があります」と中園は付け加えました。弊社のソリューションでは、人を充てていきたい取り組みや社内プロジェクトを社員に公開し、参加希望者を公募する機能(図7)を提供しています。こちらを活用して、企業のニーズと社員の志向をマッチングすることができます。

図7 オポチュニティマーケットプレイス 社内プロジェクトへの参加応募画面
図7 オポチュニティマーケットプレイス 社内プロジェクトへの参加応募画面

 

ステップ3 施策効果と社員エンゲージメントレベルの把握・軌道修正

ステップ1と2ではギャップの可視化からそれを埋めるためのアクションについて紹介しましたが、ステップ3では、そういった施策の進捗を見ながら、効果がでているかモニタリングしていきます。また、社員が十分に能力を発揮するために重要なエンゲージメントレベルの可視化も紹介しました。

まず社員の育成施策効果の把握として、社員の能力評価結果を経年推移で確認するレポート(図8)をご覧いただきました。育成した結果、前年や過去と比較して実際に伸びているのか確認が可能です。もし伸びていないようだったら、育成施策の軌道修正や対策を打つ等、役立てていただけます。

図8 能力評価の経年推移レポート
図8 能力評価の経年推移レポート

 
また、ステップ2で計画的に後継者を準備していく点をご確認いただきましたが、あのように後継者をノミネートしていった結果、現時点で後継者の充足度はどのようになっているのか、レポート(図9)で確認しました。

レポートでは、ポジション数に対しての後継者の充足状況や、組織毎の後継者数を確認できます。また、レポート画面左側に示されている滞留年数は、ノミネートした後継者が何年滞留しているのか指しています。滞留年数が長い人材がいるのであれば、例えば、もっと緊急度が高く埋めていくべきポジションを検討しても良いかもしれません。このように後継者状況を俯瞰してみて、必要なアクションに活かしていただけます。

図9 後継者充足状況レポート
図9 後継者充足状況レポート

 
今回は後継者の充足状況や能力の成長状況という視点で現状把握をしましたが、他にも様々な切り口でレポートを作成し、施策効果のモニタリングにご活用いただけます。

ステップ3の後半では、社員のエンゲージメントレベル可視化の例として社員満足度調査サーベイの結果を確認するダッシュボード(図10)を紹介しました。

サーベイをとった後、結果をすぐこのように集計した状態で確認できるので、スピーディーに改善策を打ち出すためのご支援が可能です。

図10 社員満足度調査の結果を確認するダッシュボード
図10 社員満足度調査の結果を確認するダッシュボード

 
同じダッシュボード上で確認できる図11のチャートでは、どういったことが社員の勤続意欲に影響しているのか、相関性を示しています。左にいくほど結果が悪く、上に行くほどその結果への相関性が高いことを指しており、左上に表示されている項目が優先課題となっています。例えば、赤点で上司の傾聴力とありますが、ここでネガティブな声が多く、すぐに改善していく必要があるので、マネージャー層のコミュニケーションスキルを向上させるためのアクションを打った方が良いかもしれません。

図11 勤続意欲に影響を与える要因を確認するチャート
図11 勤続意欲に影響を与える要因を確認するチャート

 
このようなダッシュボードを活用して社員エンゲージメントレベルを把握し、社員の能力を最大限引き出せるような環境になっているのか確認し、軌道修正に役立てていただけることをご確認いただきました。

最後に

中園はまとめとして、本パートでデモンストレーションを紹介したSAPの人事ソリューション、SAP SuccessFactorsの概要紹介で締めくくりました。「人事給与から人材育成、そして分析まで幅広く機能を提供している人事ソリューション」と紹介。そして、「日本での豊富な導入実績とノウハウがあることから、各社の要件に合ったベストなご提案をさせていただいています」と結びました。


以上、セミナー当日の内容をハイライトでご紹介いたしました。本イベントに限らず、過去に実施したSuccessFactorsのwebinarの録画や導入事例などはこちらのサイトよりご確認いただけます。