SAP Japan プレスルーム

SAP S/4HANAとFinTech融合によるデジタルトレジャリーへの変革 第三弾 資金繰り管理編

20 Nov 2013 --- Businesswoman preparing presentation on graphical screens --- Image by © Monty Rakusen/Corbis

はじめに

本記事では、デジタルトレジャリーの実現において根幹となる資金管理の中でも、資金繰り管理についてお話します。「SAP S/4HANAとFin Tech融合によるデジタルトレジャリーへの変革 全体概要編」「SAP S/4HANAとFin Tech融合によるデジタルトレジャリーへの変革 銀行管理編」の続きとなっており、全体像を把握頂いた上で読んでいただけるとより理解が深まるかと思います。なお、本ブログは全体概要編の【主要モジュールの説明】の1.Cash Managementの章の資金繰りの機能に焦点を当てたものです。

目次

  1. 資金管理とは
  2. 今回ご紹介する機能について
  3. 各業務においてSAPソリューションで実現できること
    1. 資金ポジション管理
    2. 流動性管理
    3. 資金振替
    4. 資金計画
  4. おわりに

1. 資金管理とは

企業における資金管理業務は、資金残高を把握し、営業活動や経営に支障が出ないようにアクションを起こすことや、資金情報を活用し適切な経営施策を実行することが目的です。資金管理の担当者は口座残高を把握し、受け取る金額が不足していないか、支払う金額分が口座にあるかどうかをみます。特にグローバル企業においては、子会社側の各種資金取引が見えることにより、本社主体の資金管理体制を構築し、不正行為を防止することにつなげることも重要かと思います。SAP S/4HANAをお使いの場合、グループ全社のキャッシュの流れを全てERP内でとらえることができますので、あらゆる業務取引で発生した資金の出入りを可視化することが可能になります。ERPの活用に加えて、資金管理業務を全社でシステムすることで得られるメリットを本日はご紹介します。

2. 今回ご紹介する機能について

今回は資金管理業務の中でも資金繰りの管理業務に焦点を当てていきます。資金管理担当者は、国別や会社別、銀行口座別の直近1週間のキャッシュフローを確認し、十分な資金が各所にあるのかどうかを確認します。もし、担当している地域で資金がショートしていた場合には別の地域から資金の振替を行う必要があります。また、資金の余剰を正確に把握できれば、設備投資などに無理なく資金を振り分けることもできます。このように、資金の所在を可視化し、資金の振替など必要な処理をスムーズに行うことが、財務基盤の健全性を高めていき、市場から信頼してもらえる企業運営を行うことにつながります。また、短期の資金流動性の確認だけではなく、中長期的に資金計画を立てていくために、SAP S/4HANAと連動し、SAP Analytics Cloudの機能を活用し、資金計画を立てていきます。

3. SAP資金管理ソリューションでできること

a.資金ポジション管理

資金のポジションを過去から未来に渡り把握することが出来ます。国別や会社別、銀行別などの切り口で資金の残高状況をリアルタイムに確認することが出来ます。全社の資金の動きを正確に確認できるので、子会社の資金統制や、余剰資金の有効活用による戦略的な意思決定を行うことにつながります。

b.流動性管理(資金繰り管理)

資金管理担当者は、日々の資金管理業務の一環で、日次、週次、月次単位での要因別の入出金予定情報及び口座残高情報を確認できます。SAPの資金管理機能は、ERPの一モジュールのため、工場やオフィスで行った購買発注情報、金融商品の取引の情報を加味した入出金情報を確認することが出来ます。その結果、より正確に入出金予測情報をとらえ、必要に応じて、資金調達や資金移動を行うなどの意思決定を行うことができます。

上の図は、SAP S/4HANAを表しています。オレンジ色の枠で囲まれているのが今回ご紹介している資金管理の機能を搭載した財務資金管理モジュールです。財務資金管理モジュールには、購買管理、販売管理、財務会計のモジュールから資金の出入りに関する情報がすぐに連携される仕組みになっており、入出金の動きを複数の発生源から予測値も含めて表示することが出来るようになっています。

具体的な画面のイメージとしては、上記の図のように購買時、受注時の資金の流れを予測値としてとらえることが出来るほか、すでに確定した入金、支払情報、金融商品の取引にかかわる資金実績の流れをとらえることが出来ます。上記の例では、直近の三日後までの日次予測と3か月分の月次予測を表示していますが、一か月単位の予測を加味した数値や日次の実績値を確認するといった柔軟な時間軸の変更が可能です。

上図では、タイのキャッシュフローの枠組みで向こう7か月の資金の流れを確認している画面です。このようにグローバル企業において複数の国で資金管理を行う場合でも、各国で必要な資金科目の階層を定義して、その階層を適用してデータを参照することが出来ます。

上の画面イメージは、各銀行口座の実績のキャッシュフローを月次で表示しています。上記3つの図はすべて同じアプリケーションを使用した例になっており、その時々の必要に応じて、日次の資金繰り予測、国別のキャッシュフロー、銀行口座ごとの実績キャッシュフローなど見る指標を柔軟に変えていくことが可能です。

c. 銀行口座振替処理

先ほどの資金繰り情報から、資金の不足や余剰を確認し、銀行口座間の資金移動を行うことが出来ます。資金移動の情報を登録するために先ほどの画面から下記の画面に遷移し、いつどのくらいのお金を移動するのかを登録していきます。特定の銀行口座間での資金移動が多い場合には、予めテンプレートを登録しておけば登録作業を効率化することもできます。

送金を行う銀行口座と振込先となる銀行口座、及び送金を行う期日を指定して登録します。

テンプレートを使えば、事前によく行う送金のパターンを登録できます。

d. 資金計画

下記のイメージにあるように、SAP Analytics Cloudというビジネスインテリジェンスやプランニング機能を兼ね備えたツールを使うと、非常に分かりやすい形でSAP S/4HANA上で記録された実績値と比較を行うことが出来ます。次年度の資金計画を登録する際にも、予め提供されている資金計画向けのテンプレートを活用することが出来るので、入力の効率化が図れるほか、前年度の計画・実績値をコピーして次年度のものを登録することが出来るので作業の効率化にもつながります。

上の画面は、資金繰り計画の活用例を示したものです。ここでは、資金管理の部門長や役員の方が資金繰りの予測や、資金運用状況の把握をするために計画値、実績値、予測値を参照する画面です。右側の計画(予算)の項目が予め資金管理部門の方が立てた資金繰り計画を表しています。計画は資金科目単位で建てることが出来、前年度以前の実績値を参考にした機械学習の予測値を元に計画を立てられるので、根拠のある資金計画を立てていくことが出来るようになっています。

4. おわりに

資金管理シリーズの第3弾の位置づけとなる本ブログでは、SAP資金管理の機能の中でも、資金繰り管理についてご紹介しました。ERPの中に内包された資金管理機能ですので、全社の資金の動きを正確にとらえることが出来るのが特徴です。特にグローバルな資金の動きに統制をとっていきたい、効率的な資金運用を行っていきたいという場合にはぜひご検討いただければ幸いです。次のブログでは、財務リスク管理の機能について詳しくご紹介いたします。

 
 

モバイルバージョンを終了