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2022年11月25日、“社会課題解決やサスティナビリティのための取り組みを見て、体験して、味わって、考えよう。”と題して「Society & Sustainability Festival」を開催しました。開催地となったSAP Experience Center Tokyoには社内外多くの方が集い、会場にお集まりいただいた方とオンライン視聴含め、大盛況の4時間となりました。こちらのイベントの様子を全4回にわたってレポートします。

試食あり、体験イベントあり。大盛況となった「Society & Sustainability Festival」

本イベントは、中期計画 “SAPジャパン 2023 Beyond”の中において “Society”と“Sustainability”という2つのカテゴリを一度に集め、1年間の成果発表を兼ねたお祭り企画となります。当日はSAP Experience Center Tokyoのオープンスペースを区切り、配信・公聴をする「セッション会場」、昆虫食、代替肉といったサスティナブルな食品の試食や、日本酒IoTディスペンサーで日本酒の試飲ができる「ネットワーク会場」、そして体験型のセッションが楽しめる「エクスペリエンス会場」が設けられ、カジュアルな雰囲気の中で社会課題やサステナビリティに関して様々な体験ができる場となりました。

「エクスペリエンス会場」のIXR(Immersive Experience Room)では社会課題の共感VRワークショップを実施。今回は「カンボジアの農村に見る豊かさと貧困とは?」と題し、カンボジアのリアルな社会課題をテーマに、360度VRのブースとディスカッションスペースとを行き来しながら問題を深堀していくエクスペリエンスセンターならではの体験型の共感VRを実施しました。参加者からは「リアル紙芝居のようでエキサイティングだった」「自分達が置かれている状況とカンボジアの状況の対比が強く感じられた。この手のディスカッションは詭弁になりがちだが、リアルさがあったからか、べき論にならず、本当に自分ができそうなことが話し合えたのが良かった」などの意見が寄せられていました。

 
また「エクスペリエンス会場」のもう一つの体験セッションは「スマートごみ箱を作ろう」と題して親子で楽しめる小学生向けのプログラミング教室を開催。社員のお子さんが参加し、自分が出すごみの量を測ることができるスマートごみ箱を手作りし、ごみを見える化しながら減らすためのデータを集めていく過程を体験します。デジタルと社会課題を同時に体験できるセッションに子供だけでなく社員である親御さんも感動。最後は自作のスマートごみ箱をお土産として持ち帰っていただき、お子さんたちの学びと笑顔あふれる楽しいイベントとなりました。

キーノートセッション:「プラスチック循環型社会の実現に向けて」

さて、セッション会場で行われたプログラムの内容を詳しく説明します。当日はSAPジャパン内田会長によるオープニングトークが行われた後、下記4セッションが開催されました。

15:05~ キーノートセッション:プラスチック循環型社会の実現に向けて
16:00~ イントラプレナーズトーク“社会起業家への道”
17:00~ 2022 Probono project成果報告会
18:00~ サスティナブルセッション“地球温暖化の脅威~私たちにできること”

本ブログではキーノートセッションの紹介をしていきます。SAPジャパン吉元宣裕がモデレーターを務め、3社それぞれが行うプラスチック循環型社会の実現に向けた取り組みについてパネルディスカッションを行いました。

登壇者の写真
登壇者(写真左から): 吉元宣裕(SAPジャパン)、柳田康一氏(CLOMA技術統括)、宮原伸朗氏(アミタホールディングス株式会社)、岡本朋子氏(DIC株式会社)

 
CLOMA(JAPAN Clean Ocean Material Alliance)柳田康一氏からは、「海洋プラスチックごみ問題に挑む企業アライアンス」と題したスライドを発表。海洋プラスチックごみ問題の解決に向けたプラットフォームとして設立された官民一体の協力団体として500社ほどが加盟しているCLOMAの事業内容、「プラスチックは使い勝手が良く人類は恩恵を受けてきたが、地球規模で海洋ごみの問題が出てきています。モノづくりの世界は、これまでの“先端の機能を生み出す”というから、“社会を守る”という視点に変化しています」とお話されたプラスチックごみのパラダイムシフトの現状など、花王(株)でESGをリードし、プラスチック循環型社会を実現するため様々な問題解決に関わる第一人者としての貴重な知見を授けていただきました。

ちなみにCLOMAとSAPは、ともにデザインシンキングワークショップを実施し、循環型経済を作り上げるための検討を進めている関係性でもあります。

 
アミタホールディングス株式会社 宮原伸朗氏からは、資源リサイクル、環境CSR・自然産業のコンサルティングなどを行っている会社の事業内容の説明のあと、「プラスチック循環型社会の実現に向けてサーキュラーエコノミーで私たちは“幸せ”になれるのか?~神戸市の取り組み紹介~」として、様々な取り組みの中から神戸市との実証「MEGURU STATION®︎※」を紹介いただきました。

「MEGURU STATION®︎」は、企業にとっては良質な資源が手に入る場所であり、消費者にとっては「リサイクル貢献している」「しっかりと分別することが大切」という意識がますます高まる取り組みでもあります。

「一企業としても、生活者一個人としても“この先地球はどうなってしまうのだろうかという不安がある中で、身近な取り組みから幸福度や安心感を高めていくことができたら」と締めくくられました。

※資源の持ち込みをきっかけに地域内の”資源循環”と”住民同士の交流”を生みだす互助共助コミュニティ型の資源回収ステーション。神戸市と共に2022年度内に全区展開を目指す。2030年までには全国5万か所での展開も視野に。

 
印刷インキなどで世界トップシェアを誇るDIC株式会社 岡本朋子氏からは「DICにおけるプラスチック資源循環の取り組み」と題し、自社でのケミカルリサイクルプラント計画の紹介や、完全循環実現のための取り組みについてお話いただきました。

「日本におけるプラスチックのリサイクル手法は、マテリアルリサイクルが主流で、化学反応を利用して再資源化するケミカルリサイクルによる実績はごくわずかです。しかし、世界が目指す高度な循環型社会を実現するには、マテリアルリサイクルだけでは限界があり、ケミカルリサイクルの進展・拡大が不可欠といわれています。数千トンレベルで還元効率・エネルギー使用量・コストなどを評価しながら反応制御技術をレベルアップさせ、より収率性の高い技術の確立を目指します」

DIC様はSAPジャパンのグリーントークンを活用いただいてプラスチックのトレーサビリティの取り組みを行っていることもあり、興味深いトークとなりました。

 
プレゼンテーション後にパネルディスカッションを実施。

3人の意見として共通していたのは「サスティナビリティに対応できない企業は生き残れない」という危機感と、「プラスチック循環型社会の実現は、1人(1社)では不可能。様々な人や企業が前向に繋がるきっかけづくりが欠かせない」というお考えでした。

最後にSAPジャパンへの期待

3社からはSAPに期待することへの提言も寄せられました。その内容がまさにSAPが強みとする部分、さらには貢献できる部分を具現化していたので3名のお言葉を下記にまとめます。

柳田「熟練した人ほど直接的の取引先との損得勘定を価値と認識しがちだが、本来であればもっと高い視座から社会全体の価値創造を志向し、企業や人はプロフェッショナルとして社会価値の一翼を担うべきだと考える。システム全体を見渡せるSAPさんからならそんなアドバイスをいただけると期待している」

宮原「実際のところ資源循環だけを切り取ったビジネスだけではペイすることが難しく、そこに例えば“他部分の経費が削減できる”などの付加価値をつけていくことが必要になる。そういった部分の見える化をSAPさんとご一緒できたら」

岡本「サスティナビリティは、外部のいわば不経済なものをどうやって内部化していくか?という大きな課題があるが、そのときにツールとしてのITの力の貢献度合いがとても大きい。ERPに加え、社外も繋いでもらうような新しいシステムに期待したい」

SAPが日本企業やお客様の課題解決に欠かせないパートナーとしてこれまで以上に世の中に認知され、事業を通じて社会貢献をする。そのための取り組みが少しずつ具現化している手ごたえを感じながら、SAPならではの製品やサービスを今後も力強く推進していきたいと実感するセッションとなりました。

 
Society & Sustainability Festival Vol.2
Society & Sustainability Festival Vol.3
Society & Sustainability Festival Vol.4