「小売業におけるロイヤリティとは、よそにそれより良いものがない、ということと同義です」ウォルマート米国法人社長兼 CEO で全米小売業協会 (NRF) 理事会会長のジョン・ファーナー (John Furner) 氏は、今年初めに開催されたRetail Big Showの開会の辞でこう述べました。買い物客は常により良いカスタマーエクスペリエンス (CX) を求めている、と強調したうえで、「他でそれを見つけたとたん、彼らは去っていきます」と語りました。 

Pumaのシニア CRM マネージャーであるデビッド・ウィッツ (David Witts) 氏は、「しかし、適切なデータを巧みに利用することで、CXを向上させ、顧客が他でより良いCXを求めないようにすることができます」と述べています。世界的なアパレルメーカーであるPumaは、リファラルデータの活用により、大きな成功を収めています。 

ウィッツ氏は NRF2023 の会場で SAP に次のように語りました。「リファラルデータとは全く新しいレベルのデータです。誰がそれを買っているかだけでなく、誰がそれを紹介しているか、そして誰が本当のブランド支持者なのかがわかるのです。私たちはロイヤリティというものの定義を再考するときに来ているのです」

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 顧客ロイヤリティの再定義 

ウィッツ氏は SAP のビデオで次のように述べています。「当社では、独自に顧客のセグメント化を行っており、例えば、現在は何も商品を購入していないお客様であっても、友人に商品を紹介してくれていて、その友人らが次々と当社の製品を購入している、という特徴を持ったお客様が分類されるセグメントがあります。このような分類を行うことで、当社にとってのそのようなお客さまの価値が変わり、コミュニケーションの取り方も変わってくるのです」 

顧客のセグメント化とは、似たような特徴を持つ人々をグループ化することで、企業がコミュニケーションや製品などをパーソナライズすることを容易にするものです。ウィッツ氏によると、Pumaにとってファーストパーティーのリファラルデータは、セグメント化とコミュニケーションに特に有用であるとのことです。 

「これは、顧客とは誰のことを指すのか、という考え方を変えるものです。定期的に当社製品を紹介してくれているのであれば、その人は十分ブランド支持者であると私たちは考えるのです」と、ウィッツ氏は語りました。 

そこで、Pumaのリファラルプログラムが登場しました。ウィッツ氏によると、このリファラルプログラムは、ブランド支持者への対応や特典に影響を与えるものであり、「顧客生涯価値の向上」と「顧客との関係構築」という会社が掲げる 2 つの目標から生まれたものだということです。 

ウィッツ氏は次のように述べています。「リファラルプログラムを取り入れることは、これら 2 つの目標に沿ったものだと私たちは考えました。当社の製品を購入する気持ちがない人でも、友達に紹介してくれているのであれば、私たちにとって彼らの価値は大きく変わるということなのです」 

機会の創出 

正しいデータは、オンライン取引のみならず実店舗をも活性化させるインサイトを提供します。Macy’s Inc. 会長兼 CEO のジェフ・ジェネット (Jeff Gennette) 氏は次のように述べています。「データから、今うまくいっているのは何で、注意しなければならないのは何かを明らかにすることができます」 

NRF 2023の基調講演で、ジェネット氏は次のように述べました。「お客様は、昼間は仕事着に見えて、退社後、そのまま遊びに行けるような服装を探されています。そんなアイデアを求めているお客様が、当社にとってはビジネスチャンスになります。マーチャンダイジングの観点から、そのようなニーズを満たすことで、当店は 1 年前にはなかったような存在感を発揮しています。私たちは常に努力を重ね、そして、その努力が終わることはないのです」 

また、パンデミックによる経済の変化は、Saks OFF 5th にとって「大胆に新しい変化を起こし、考え方を変える」チャンスになったと、社長兼 CEO のペイジ・トーマス (Paige Thomas) 氏は語ります。この百貨店チェーンは、自社のブランドが好きな人たちは誰なのか、彼らは何を求めているのかを知り、さらに彼らのライフスタイルを知るために、データを収集し、購買層をより深く理解することに努めています。 

NRF 2023の基調講演で、トーマス氏は次のように語りました。「当社の顧客ベースの中から、非常に成長の早い購買層を発見できたことは、うれしい驚きでした。この層は、稼ぎが良く、ファッションへの興味が強く、あちこちで買い物をしている人たちだったのです。私たちは、マーチャンダイジング戦略やマーケティング戦略、そしてCXをしっかり検討することで、正しい的を捉えることができたのです 

正しいメッセージを正しいタイミングで 

データ、アナリティクス、その他のテクノロジーが、Puma製品の購入に興味を示している人は誰なのか、どの製品に興味があるのかを発見するのに役立っているとウィッツ氏は語ります。また、顧客との対話を高度にパーソナライズできる点にも注目しています。 

ウィッツ氏は次のように述べています。「正しい顧客に正しいメッセージを正しいタイミングでそして正しいチャネルで伝えたい その願いを SAP Emarsys Customer Engagement が叶えてくれるのです」Pumaでは、顧客がどのメールを開いたのか、無視したのか、メール内のリンクをクリックしたのかがわかるようになっていることから、「Pumaはお客様一人ひとりを把握することができ、そのお客様が見たいと思っているものを提供することができます」とウィッツ氏は述べました。 

ウィッツ氏によれば、差別化されたCXを提供することは、Pumaにとって非常に重要なことであり、よりパーソナライズされ、お客様に関連性の高いものを提供することが、Pumaの将来の成功に不可欠だとのことです。 

「SAP Emarsys Customer Engagement および SAP の予測分析や AI 系テクノロジーのおかげで、本当にワクワクすることが起こっています。すべてが非常に簡単になると思っています。当社がもっとロイヤリティを重視するようになったら、このことは確実に重要なカギになると思います」と、ウィッツ氏は語りました。 


デレク・クロブシャーは、SAP のビデオプロデューサーです。