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ここ数年、世界は大きな混乱に見舞われています。マクロ経済的にも地政学的にも未曽有の時代が続く中、SAP の提供するサービスが、お客様の課題に応えるべく成長を続けていることを私たちは大変嬉しく思っています。

2023 年の SAP Sapphire では、SAP® Business Network に特化した 17 のセッションを開催し、地域、国、グローバルのサプライチェーンで直面する真の課題を克服し、真の改善を実現する方法について皆様と知見を共有できたことを光栄に思います。

今回のイベントでは、SAP Business Network に関するいくつかの重要な発表を行うことができました。その中でも最も大きな発表の一つは、SAP Business Network のスタンダードアカウントを持つ取引パートナーに関わる機能強化です。SAP は、SAP Business Network への投資を続ける中で、ネットワーク上のお客様にとっての価値を大きく倍増させてきました。どんなネットワークにおいても、真の価値は、すべての関係者たちが協力し合い、価値を引き出すことで生まれるのだということを私たちは知っています。そして、私たちが行っているイノベーションはまさにそれを実現するものです。このたび、スタンダードアカウントの取引パートナーにとってさらにポータルが使いやすくなることを SAP Sapphire で明らかにしました。スタンダードアカウントの取引パートナーは、ポータルからドキュメントに無制限にアクセスできるようになります。これは、取引プロセスを簡素化し、商取引を活発にし、ネットワーク上のすべての取引パートナーに価値を提供する第一歩だと私たちは考えています。

また、基調講演では、取引パートナーの迅速なオンボーディングとビジネスの成長を可能とする SAP Business Network の 5 つのイノベーションを紹介しました。これらのイノベーションは、バイヤーがより迅速かつ容易に取引パートナーを見つけ、適格性を確認するのにも役立ちます。現在、私たちのチームは、早期導入いただいているお客様と協力してこれらのイノベーションのテストを実施しており、一般利用の開始は 2023 年後半を予定しています。

基調講演で発表された 5 つのイノベーションは以下のとおりです。

  • インテリジェントなサプライヤーインサイト:SAP Business Network 上のサプライヤーのパフォーマンスに関する詳細情報を提供します。サプライヤーは、直感的なダッシュボードで、一目で把握できる 14 の主要業績評価指標が示す販売実績に関する貴重な情報を得ることができます。
  • 統合の改善:ネットワーク上の複数の顧客へのオンボーディングをより迅速かつ容易にします。顧客ごとに独自の統合設定を構築する代わりに、既存の設定を利用して、一度に複数の顧客とより迅速かつ費用効果的に接続し、オンボーディングプロセスを合理化できるようになりました。この改善により、バイヤーはより簡単に取引パートナーをネットワークに取り込むことができ、よりスピーディな価値実現を図ることができます。
  • 新しいマーケットプレイスカタログ:サプライヤーは SAP Business Network 上で自社製品を公開できます。SAP Business Network ポータルから、バイヤーは商品の検索、比較、問い合わせを行うことができます。この新しい機能により、取引パートナーは自社製品を紹介できるようになり、世界中のより多くの潜在的な顧客にリーチしやすくなります。
  • インテリジェントなリードマッチング:取引パートナーと購入意志のある見込みバイヤーをつなげる新しいサービスです。コールドコールの代わりに、SAP Business Network Discovery(旧 SAP Ariba Discovery)で確度の高い相手を見つけることができます。
  • 企業プロフィールの機能強化:取引パートナーの認定書やサステナビリティ評価を示すことができ、競合他社に差をつけることができます。環境・社会・ガバナンス (ESG) が経営幹部にとって最重要課題となっている昨今、こうした情報を取引パートナーの差別化要因にすることは、誰にとっても価値あることです。これに加えて、取引パートナーのサステナビリティ評価を提供する EcoVadis 社とのパートナーシップも紹介しました。

事業運営にサステナビリティを組み込む

サステナビリティは非常に重要なトピックなので、もう少し深く説明したいと思います。SAP はこのテーマ全体に焦点を当て続けていますが、お客様との対話から、サステナビリティへの注目度は依然高いと感じています。持続可能な方法で製造された商品を購入したいと考える消費者は増え、サステナビリティに中核的価値を置いている企業で働きたいと考える働き手も増えています。SAP では、SAP Business Network も含めて、こうした目標を実現するソフトウェア製品を作りたいと考えています。

各国政府もまた、同様の要求事項を設けるようになりつつあります。例えば、米国の政策立案者は、連邦政府の主要請負業者に環境データの開示を義務付ける「連邦サプライヤーの気候リスクとレジリエンスに関する規則 (Federal Supplier Climate Risks and Resilience Rule)」を提案し、ドイツでは、企業の社会的・環境的責任を規制する Lieferkettensorgfaltspflichtengesetz (LkSG) が可決されました。

このことを念頭に置いて、サプライヤーが重要な情報を共有しやすくしました。このたびの機能強化により、サプライヤーは、サステナビリティ評価を自己申告したり、EcoVadis 社によって検証された評価をプロフィールに取り込んだりできます。まだ EcoVadis 社による評価を受けておらず、詳細を知りたいとお考えの場合は、SAP Store で手続きを開始していただくことも可能です。

さらに、サプライヤーが、人権デューデリジェンスのためのサプライヤー・セルフアセスメントアンケート (SAQ) に記入できるようにしました。この標準アセスメントにより、取引パートナーはデューデリジェンスに対して準備を行い、ネットワーク上のデータをバイヤーと共有できるようになり、オンボーディングのサイクルタイムが短縮します。セルフアセスメントは、SAP のサプライヤーリスクソリューションを補完するものです。バイヤーは、自身の SAP Business Network アカウントから、または SAP® Ariba® Supplier Risk から、サプライヤーに対してアセスメントの完了を依頼することができます。

SAQ は、サプライヤーが入札ごとにアンケートに回答するのではなく、一度回答すれば多くのバイヤーと共有できるため、オンボーディングサイクルタイムの短縮に役立ちます。これは、真の「ネットワーク効果」の活用であり、サプライヤーとバイヤー双方のプロセスを合理化します。

SAP Sapphire では、SAP® Business Network for Industry のローンチも発表しました。これは、SAP の革新的ビジネスネットワークに SAP 独自の業種別専門知識を組み合わせたものです。比類のない奥行きと拡がりを持つ SAP のビジネスネットワーク機能と、SAP の業界専門知識を組み合わせることで、真にユニークなサプライチェーンソリューションを実現しています。第一弾として対象となる業種は、食品・消費財、ハイテク、産業用機械製造、およびライフサイエンスです。

ウィーンで開催される SAP® Spend Connect Live では、SAP Business Network の詳細と、SAP がサプライヤーのビジネスの成長をどのように支援できるかについてさらに深く解説します。この機会をどうぞお見逃しなく。


ムハマド・アラム (Muhammad Alam) SAP Intelligent Spend and Business Network のプレジデント兼チーフ・プロダクト・オフィサー、および SAP Business Network のジェネラル・マネージャーです。

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