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SAP はサステナブルなモビリティ社会の実現に向け、電気自動車( EV )の充電器に関わるすべてのビジネスプロセスを管理するクラウド型ソリューション「 SAP E-Mobility 」を提供しています。2023 年 9 月に開催した SAPジャパンの年次カンファレンス「 SAP NOW Japan 」では、SAP E-Mobility の世界観を紹介する展示ブースにてデモを実施しました。また、トヨタ自動車の協力により、同社のBEV(バッテリー式電気自動車)や小型 BEV の展示と試乗体験も行われました。さらに、日立システムズ提供の EV・PHEV 用充電設備をご紹介しました。EV を取り巻く環境は急速に進化しており、SAPも各社との連携を強化しながら、ユーザーの利便性向上に力を入れています。

EV 充電ステーションの運用・サービス提供を支援

近年、サステナビリティの観点から乗用車や商用車のEV 対応に関心が集まっています。日本政府は 2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略において、乗用車の新車販売を 2035 年までに電動車 100% とし、商用車は、小型の車については、新車販売で 2030 年までに電動車 20~30%、2040 年までに電動車・脱炭素燃料車 100% にすることを掲げています※1。さらに、2030 年までに「公共用の急速充電器 3 万基を含む充電インフラを 15 万基設置する」と目標を掲げ、これまで約 3 万基の整備を進めてきました※2。

※1  https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/pdf/green_koho_r2.pdf
※2  https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/charging_infrastructure/pdf/006_03_00.pdf

SAP では、国内外におけるサステナビリティへの関心の高まりを受けて、EV 化を支援するソリューションに着目し、2021 年 9 月に EV 充電ステーションの運用・サービス提供に特化したソリューション SAP E-Mobility を発表しました。

ユースケースとして想定しているのは、以下のような企業です。

  • 商用車や営業車として EV を導入し、自社で EV 充電ステーションを運用する企業(自社利用充電設備管理)
  • 自社の EV 充電機器に運用保守のサポートサービスを付加して提供する EV 充電機器メーカー
  • 日立システムズのようにお客様に EV 充電機器の導入や EV 充電ステーションの建設/保守、充電セッション管理などを提供する企業(設備保守・運用サービス)
  • お客様に EV 充電サービスをサブスクリプションとして提供するサービスプロバイダー など

業界も、社用車として営業車両や工場内車両を利用する全業種から、公共(道の駅、市・区役所等)、小売・食品(ショッピングセンター、コンビニ、カフェ・レストラン)、不動産(オフィスビル、住宅、マンション)、自動車(ディーラーショップ、独自充電サービス)、物流(輸送トラック、配送用自動車)、電力・通信(基地局工事・保守)、交通(空港・タクシー、駅)、ガス・電力まで多岐にわたります。

EV 充電機器の稼働状態をリモート監視し、必要に応じて対策を実施

現在提供している SAP E-Mobility の主な機能は、「充電機器デバイス管理」、「充電セッション管理」、「会員情報管理」、「統計・分析」の 4 つです。

・充電機器デバイス管理

充電機器デバイス管理は、機器の稼働状態をリモートで監視する機能が中心となります。EV が普及していくと、充電器は街中だけでなく、空港やショッピングセンターなどの片隅や、人里離れた場所にも数多く設置することになります。充電器を広範囲に設置するほど、人力による保守が難しい状況も出てきます。そこで、遠隔地から充電器の状態を監視し、必要に応じて対策を施すのが、充電機器デバイス管理の機能です。すべての処理がログとして記録されるため、充電状況、エラーの原因などはログを見ることで分析が可能です。さらに充電器に何らかの問題があった場合には、再起動、リフレッシュ、充電の開始・終了、ファームウェアのアップデート、キャッシュクリアなどの実行も可能です。

充電器との接続プロトコルには、国際標準の Open Charge Point Protocol(OCPP)を採用しており、ヨーロッパ製や日本製のEV充電機器ならほとんどのメーカー製品と接続が可能です。処理やエラーのログは OCPP プロトコルに基づく形で記録し、SAP E-Mobility の画面上から確認することができます。

・AI を活用した充電セッション管理

充電セッション管理は、EV に対して充電を最小限のコストで効率的に実施できるようにデザインされた充電セッション管理機能です。通常のマニュアル設定による充電計画に加え AI を活用した充電機能を用意しており、充電を最適化することができます。

AI を活用した充電では車体のバッテリー容量や充電状況、サイトの最大電力量などを加味して同時接続された EV の充電が“コスト”、“充電”という観点で最適化されるよう自動計算し、電力を配分するように設計されています。

例えば、図のように 4 台設置されている充電器のうち、3 台の充電器に EV が接続中で、新たに 1 台の EV がやってきて空いている 1 台の充電器で新たに開始するとします。充電器全体の本来の供給可能電力は 70kW ですが、電力料金の割引プランを受けるために最大 50kW を希望最大値と設定した場合、3 台の EV が接続中は 1 台を 16kW ずつ(合計 48kW)で充電し、4 台目の接続時は自動的に 1 台を 12kW ずつに下げて充電します(合計 48kW)。

充電状態が異なる車体を考慮して、供給電力を自動調整することも可能で、例えば図のように優先車両の 2 台は 20kW ずつ、残りの 2 台は 6kW と 4kW(合計で 50kW)といった形で充電することもできます。

現在、このAI を活用した充電管理は継続して機能拡張がされており、さらなる高度化が期待できます。

このようにアプリケーションに AI を組み込む取り組みは SAP で積極的に行っています。詳細は下記 SAP サイトでも確認いただけます。
https://www.sap.com/japan/products/artificial-intelligence.html

・会員情報管理

会員情報管理では会員情報に加えて車両情報、SAP Concur  ユーザー情報などさまざまな情報管理が行えます。この会員情報は主に充電において利用者の利用権限をチェックに使われます。例えば、社用車用に充電器を各所に設置したり、サービスプロバイダーが会員向けに充電器を多数設置したりしている場合、無人対応の場合は管理ができずに不正利用されるおそれがあります。そこで、自社の社員や会員などに、充電器の利用を限定する際に利用権限のチェック機能を利用します。

・統計・分析

統計・分析は、充電履歴の詳細を分析したり、充電ステーションの稼働状況などを確認したりする機能です。例えば、統計情報を確認し、利用されていないまたは利用頻度が低い充電器があるような場合、必要に応じて移築を検討したりすることが可能になります。

費用精算や請求処理に向けたシナリオを用意

SAP E-Mobility は、EV充電機器の管理として単体利用できるソリューションですが、費用精算や請求を実施する場合のシナリオを用意しています。現在提供中のシナリオは、通勤で EV を利用している従業員が自宅で EV を充電する場合、その費用を会社に経費精算で請求する「 Charge@Home 」です。経費清算システムとして SAP Concur を利用していれば、SAP E-Mobility と連携して充電した電力量に応じた経費を支給できます。

今後は、SAP S/4HANA Cloud の会計モジュールと連携して、社用車等の充電費用を会計システムに計上するシナリオ「 Charge@work 」や、充電サービスプロバイダー向けにサブスクリプションベースのビジネスモデルをサポートする「 SAP Subscription Billing 」と連携したシナリオ「 Charge@Public 」の提供を計画しています。

国産 EV や PHEV 用充電設備とも連携

SAP NOW Japan の SAP E-Mobility 展示ブースでは、日立システムズによる EV・PHEV 用充電設備の展示とともに同社の EV インフラ導入サービス(「 EV スタンド導入・工事・保守サービス」)が紹介されました。このサービスは、EV 充電機器の導入に必要なシステム設計・構築から、導入工事・設置、システム運用(現在開発中)、システム保守・拡張までをトータルでサポートするものです。現在⽇⽴システムズでは、SAP E-Mobility を活用した充電管理サービスの提供に向けて社内  PoC で機能検証やサービス開発を進めています。同社の PoC の詳細はオンラインでも講演されました。

また、特設会場で実施したトヨタ自動車による試乗体験コーナーでは、立ち乗り型の小型 BEV「 Cwalk T 」のほか、座り乗り型の「 Cwalk S 」、2 人乗りの超小型 BEV「 Cpod 」を展示していました。試乗体験会には、講演やセッションを聞き終えた来場者が関心を示し、Cwalk T や Cwalk S に乗ってアクセルやハンドルを操作しながら、その乗り心地を確認していました。

設定作業で 5 日、トータルでも 15 日の短期導入が可能

SAP E-Mobility の活用により、遠隔一元監視による業務効率化、電気代を含めたコスト最適化、経費精算・サブスクリプションなどサービスの拡張、市場導入までの時間短縮などの実現が期待できます。導入期間は、サービス単体なら設定作業で 5 日、トレーニングなどを含めてもトータルで 15 日が標準です。サポートする EV 充電機器についても SAP が事前検証を実施し、対応可能なメーカー・製品を Web サイトで公開しています。SAP E-Mobility のトライアル利用も行っていますので、ぜひお問い合わせください。

●お問い合わせ先
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電話: 00531490110(受付時間:平日 9:00~18:00)