本日 SAP® Data Unleashed にて、SAP はデータおよびアナリティクスにおける最新イノベーションを発表しました。

データ管理、AI 主導型プランニング、アナリティクスの分野で新しい可能性を解き放つ SAP のイノベーションに関するこのたびの発表内容を、以下詳しくご説明します。

データがどこに保存されていようと関係なくインサイトへのアクセスが可能に
SAP® Datasphere のナレッジグラフ

SAP Datasphere のナレッジグラフにより、企業は社内データの実際の利用状況をより適切に表現できるようになり、生成 AI でのデータのより効果的な利用やより優れた推論を実現できるようになります。

データが SAP Datasphere に取り込まれ、変換および統合されると、SAP Datasphere のナレッジグラフは、SAP S/4HANA® などの SAP アプリケーションソースから抽出された固有のビジネスコンテキストを含む、データ内の関係を表すオントロジーを自動的に生成します。組織内の固有の属性を反映させるのに、オントロジーエディタを使ってこのオントロジーを拡張したり補強したりできます。最終的に、SAP Datasphere 内のデータが自動的にこのオントロジーに適用され、ナレッジグラフが作成されます。このナレッジグラフによって、関係のセマンティックウェブとしてデータが処理され、他の方法では追跡が困難なデータ関係から新たなインサイトを引き出せるようになります。

このナレッジグラフは、複雑で、自由形式の(オープンエンドな)質問に答えるのに適しています。例えば、マーケティングマネージャーがするような「人口 100 万人以上の成長率の高い都市に対して最も効果が見込めるマウンテンバイクのキャンペーンはどのようなものですか?」といった質問に対応できます。

ナレッジグラフは、より質のいいコンテキストを大規模言語モデル (LLM) に提供することができ、AI のハルシネーションを防ぐことができます。SAP Datasphere のナレッジグラフでは、最も複雑なクエリであっても AI の力を借りることができます。

ナレッジグラフを手作業で作成しようとすれば、その労力とコストは非常に高くつきます。SAP Datasphere のナレッジグラフでは、SAP Datasphere で既に利用可能になっている貴重なすべてのコンテンツを使用できるので、この手間を省くことができます。このナレッジグラフでは、SAP の生成 AI コパイロット Joule(ジュール)を利用でき、ビジネスユーザーはオープンエンドな質問と、制限のある(クローズドな)質問の両方で、瞬時に文書化された回答を得ることができます。SAP Datasphere ナレッジグラフのプレビューは、ページ最後のリンクからお申し込みいただけます。

自動生成されるナレッジグラフにより、AI は複雑でオープンエンドな質問に答えることができる

SAP HANA® Cloud のベクトルエンジン

SAP HANA Cloud の次期リリースでは、既存のマルチモデル機能にベクトル機能が加わります。この機能によって、お客様は単一のデータベースを使って、関連する全種類のビジネスデータから価値を引き出すことができます。ベクトルエンジンを含めることで、お客様はさらに、人間的対話による自然な直感と、強力な機械学習およびマルチモデル処理機能を組み合わせたインテリジェントなデータアプリケーションを構築できます。

SAP HANA Cloud のベクトルエンジンは、SQL を使用してベクトルを保存および比較する機能を提供します。ベクトル間の類似性を判断することで、検索拡張生成 (RAG)、レコメンデーション、分類、クラスタリングなどのユースケースが可能になります。SAP HANA Cloud ベクトルエンジンの主なメリットは以下のとおりです。

  • SQL 対話を行う単一のマルチモデルデータベースで、データアーキテクチャーとセキュリティをシンプル化
  • 空間データ、グラフデータ、JSON データ、リレーショナルデータをベクトルクエリと組み合わせることで、新たなインサイトを得る
  • HANA Cloud エコシステム(クライアント、Python ライブラリ、CAP など)をベースにしたソリューションに、ベクトルのユースケースを簡単に組み込むことができる
  • プラグインを介して LangChain のようなオープンソースコミュニティツールと統合可能

SAP HANA Cloud ベクトルエンジンは現在パブリックプレビュー中で、一般提供は 2024 年第 1 四半期後半の予定です。

SAP Datasphere におけるデータプロダクト利用のシンプル化

データプロダクトは、DaaP (Data as a Product) へのセルフサービスアクセスを容易にし、アプリケーションの境界を越えたデータ共有を可能にします。データコンシューマーは、タスクを実行するために必要なデータを探索、理解、アクティブ化できる容易な方法を必要とし、データプロバイダーは、その資産を公開して、データコンシューマーが利用できるようにする容易な方法を必要とします。

SAP はこの領域において、大規模なデータ共有を促進するユーザーエクスペリエンスの向上という革新的な取り組みを行っています。まずは、SAP の基幹業務アプリケーション、業種別ソリューション、またはサードパーティによる公開データプロダクトから始まり、次に SAP Datasphere でのシンプルなデータ消費へと、取り組みを進めています。

SAP Datasphere では、SAP および SAP 以外のデータプロダクトにすぐにアクセスでき、それらを SAP Datasphere インスタンスに簡単にインストールできます。手順としては、関連する接続が確立され、ユーザーが詳細を入力する必要なく SAP Datasphere 上に必要な成果物が生成されます。ORD (Open Resource Directory) プロトコルで記述されたメタデータによって、データのプロビジョニングが容易になるのが、その鍵になっています。カタログとデータプロダクトのインストールが密接に連携されるので、SAP Datasphere 内のエクスペリエンスが調和し、向上します。最新情報については SAP Road Map Explorer をご覧ください。

カタログから利用できるデータプロダクトにより、データユーザーのエクスペリエンスと生産性が向上

SAP Datasphere のセマンティックオンボーディングの強化

セマンティックオンボーディングにより、SAP S/4HANA® と SAP BW/4HANA® から SAP Datasphere へセマンティックリッチオブジェクトがシームレスにインポートされます。さらに SAP は、オンボーディングエクスペリエンスを統一して、SAP HANA Cloud と SAP データプロダクトに対するサポートを追加することで、次のステップへと進んでいます。

お客様は、計算ビューを SAP Datasphere のデータレイヤーにインポートすることで、SAP HANA Cloud のモデリングアプローチを SAP Datasphere と組み合わせることができるようになります。これにより、SAP HANA Cloud と SAP Datasphere のオブジェクトを同期しながら、メジャー、属性、階層、集計、通貨/単位などのセマンティック情報を保持し、SAP HANA モデリングへの先行投資を活用できます。

同様に、SAP データプロダクトのセマンティックオンボーディングにより、SAP の基幹業務アプリケーションや業種別ソリューションからビジネスコンテキストを継承できるようになります。ソースシステムのセマンティクスを、基盤のビジネスデータファブリックに転送することで、SAP Datasphere は分析ワークフローを劇的に改善し、データ駆動型インサイトをスピーディかつシンプルに獲得できます。

Collibra AI Governance SAP ソリューションの統合

SAP と Collibra のパートナーシップは、エンドツーエンドのデータガバナンスを実現し、ビジネスデータファブリック全体で、信頼できるデータを全ユーザーに提供します。クリティカルなビジネスプロセスでの AI によるタスクや意思決定の自動化が進むにつれ、AI へのガバナンスも必要になっています。

Collibra とのパートナーシップは、Collibra AI Governance によって拡大され、企業のデータガバナンスと AI ガバナンスのニーズに対応できるものへと進化します。Collibra AI Governance と SAP ソリューション間に独自の統合が構築され、AI に使用されるデータとモデルを単一のプラットフォーム上で結びつけられるようになるので、企業は AI 開発の取り組みを追跡・管理できるようになります。

  • お客様は、AI モデリングに利用される SAP データのデータリネージとメタデータを理解できるようになります。これにより、ユーザーは AI モデルがどのデータに基づいてトレーニングされたものなのか、さらには、そのデータが正確で信頼できるソース由来のものか確認できます。
  • お客様は、単一のビューから、組織内にどのような AI モデルが存在し、どのデータが AI に使用されているか把握できるようになります。SAP のテクノロジーに基づいて作成された AI /機械学習モデルは Collibra AI Governance プラットフォームに登録されます。

SAP と Collibra のパートナーシップの拡大によって、組織の透明性が高まり、説明責任機能が強化され、法規制、コンプライアンス、プライバシーポリシーの遵守が推進されます。さらに重要なこととして、バイアスのかかった意思決定や不正確な推奨など、AI に起因するその他のリスクを防ぐことで、ユーザーの信頼を築くことができます。

SAP と Collibra は連携して、両者のお客様が組織全体でデータガバナンスと AI ガバナンスのニーズに対応できるよう支援します。Collibra AI Governance は先週ローンチされ、ご興味のあるお客様にはご利用可能となっています。

SAP Datasphere Confluent の統合

SAP のデータ戦略の中核は、オープンなデータエコシステムを通じて、世界有数のデータベンダーや AI ベンダーと相互運用できる環境を提供することです。そのために新たに強化された Confluent との統合により、SAP Datasphere 間でのデータのリアルタイムなストリーミングが可能になりました。

まず、Confluent 独自のスキーマレジストリ機能の活用により、アウトバウンド機能が拡張されました。次に、Confluent スキーマレジストリが SAP Datasphere 内部で Confluent データのシームレスな消費を可能とするために使用されるようになります。

この統合は Confluent 向けにカスタマイズされたもので、両方のお客様に優れたユーザーエクスペリエンスを提供します。追加でカスタムアプリケーションを開発する必要なく、アプリケーションレベルでの接続が可能です。この統合は、SAP Datasphere であらかじめ構築されたレプリケーションフローであり、すでにデルタ処理とリアルタイム処理がネイティブに含まれています。このため、お客様はすべてのステップですべてのデータをロードする必要がなく、データが変更されたときにその差分だけロードすればよいので、プロセスが非常に効率的になります。

Kafka と Confluent へのデータ取り込みのための最初の統合は、既に一般利用が可能になっています。Confluent 固有のアウトバウンド統合とインバウンド統合のための追加機能は、それぞれ第 1 四半期末と第 3 四半期末に一般利用可能となる予定です。

ビジネスデータファブリックによる計画の変革
計画向け SAP® Analytics CloudSAP Datasphere の緊密な統合

SAP Datasphere と計画向け SAP Analytics Cloud がより緊密に統合され、ビジネスデータファブリックが計画ユースケースへと拡張されます。SAP Analytics Cloud の計画モデルを SAP Datasphere に展開することで、計画データと実績データをともに使用してリアルタイムの舵取りを行うことができます。

SAP Analytics Cloud は、データフットプリントを削減し、モデリングにかかる労力も削減することで、SAP Datasphere と、その変換および統合のためのネイティブ機能を介して、計画機能を拡張します。これにより、今日発生しがちなデータの多重コピーの格納に潜む複雑さとリスクが軽減されます。

計画向け SAP Analytics Cloud では、マスターデータのライブ利用を含め、拡張計画および分析シナリオのために、実績データと計画データにライブアクセスできます。これによって、SAP Datasphere は計画プロセス/ツールを統合できるプラットフォームになります。

この例では、世界銀行が提供するサードパーティのインフレデータ(青枠)が Datasphere を通じて提供され、計画担当者が SAP Analytics Cloud のコンパスを使ってシナリオ計画を行うのに役立っている

SAP は、計画をシームレスに統合できることで、データをインサイトと将来のアクションに変換するために必要な全テクノロジースタックをカバーする、ビジネスデータファブリックを提供する唯一のベンダーです。最新情報については、SAP Road Map Explorer をご覧ください。

ビジネス全体で信頼できる AI を育てる
SAP Analytics Cloud の生成 AI コパイロット

SAP のお客様は、SAP Analytics Cloud で事業計画を策定したりシミュレートしたりするときに、生成 AI のパワーを活用できるようになります。計画・分析担当者は、Joule(ジュール)のパワーによって、幅広いビジネスプロセスで生成 AI 機能を活用できます。データディスカバリー、ダッシュボード作成、計画モデルのメンテナンスなどの業務は、コア機能の向上と優れたユーザーエクスペリエンスというメリットを得られます。

自然言語処理が持つパワーにより、エンドユーザーは容易に分析クエリを実行し、影響因子(ドライバー)の影響をシミュレートし、リソースの割り当てを計画し、ダッシュボードや計算を自動生成することができます。例えば、ある最新計画において、粗利益が減少した理由を知りたいビジネスユーザーが Joule に問い合わせると、Joule は過去の計画の反復と添付コメントを自動的に調べ、計画担当者が商品原価を高く見積もっている事実を発見します。

SAP の AI 投資とビジネスデータの文脈理解は、計画・分析の世界を解き放つ上で、真に無限の可能性を秘めています。

SAP Analytics Cloud の Joule コパイロット機能のプレビューは、2024 年第 2 四半期に利用可能となる予定です。プレビューのお申込みはページ最後のリンクから行えます。

Joule コパイロットを使用することで、計画・分析担当者は Joule に拡張計画のあらゆる側面を分析させ、ユーザータイプに合わせて特別にプロビジョニングされた新しい分析ビューを瞬時に作成できる

SAP Analytics Cloud のコンパス

ビジネス環境がますます不安定になる中、リスク軽減を念頭に置いた業務計画や財務計画の策定と BI インサイトの提供が不可欠になっています。そのためには、不確実性とその影響の確率をシミュレートする能力が必要です。商品価格、人件費、生産量の不確実性が、事業経費や収益にどのような打撃を与えるかを知ることで、企業はどのようなシナリオに対しても迅速に準備し、対策を練ることができるようになります。

SAP Analytics Cloud のコンパスは、モンテカルロ・シミュレーション機能をビジネスユーザーフレンドリーなインターフェースで提供します。これにより、IT 部門による事前設定や高度な統計スキルがなくても、非技術系ユーザーがリアルタイムの多変量解析を実行できるようになります。

SAP Analytics Cloud のユーザーは、同様の分析を手作業で行う場合とでは比較にならないほど少しの時間と労力で、ダイレクトにビジネスシミュレーションを実行できます。シナリオモデリング機能により、仮定間の比較が可能になり、影響の差異をレポートすることで、リアルタイムのインサイト、コンセプトの検証、選択したドライバーの感度を明らかにすることができます。これでお客様は、主要なドライバーとその組み合わせを時系列で特定できるようになり、データ間のダイナミクスをより深く理解し、より良いシミュレーションを継続的かつ迅速に実行できるようになります。コンパスがあれば、お客様は自信を持って未来に立ち向かうことができます。

SAP Analytics Cloud のコンパス機能のプレビューは、2024 年第 3 四半期末に利用可能となる予定です。プレビューのお申込みはページ最後のリンクから行えます。

インフレやその他関連ドライバーの不確実性のシミュレーションに基づいて、営業利益への影響確率の分布を示す SAP Analytics Cloud のコンパス

今日から始めよう

SAP Datasphere で、ビジネスデータの可能性を最大限に引き出す道を歩み始めませんか。データランドスケープのシームレスな統合と活性化を実現し、ビジネスをインサイトと効率の新時代へと導きます。SAP Datasphere を活用して、組織のデータ活用を変革しましょう。

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イルファン・カーン (Irfan Khan) は SAP HANA Database & Analytics 担当チーフ・プロダクト・オフィサー兼プレジデントです。

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