(本記事は、本社より6月6日に掲載されたものです)
SAP Sapphire Orlando の基調講演では、エグゼクティブボードメンバー兼 SAP Product Engineering 担当ムハンマド・アラム (Muhammad Alam) と最高技術責任者 (CTO) のユルゲン・ミューラー (Juergen Mueller) が、その講演の中で、企業が真のエンド・ツー・エンドのデジタルトランスフォーメーションを推進し、最も困難なビジネス課題に取り組む上で、SAP の最新イノベーションがどのように役立つかを紹介しました。
SAP 社員による実際の製品デモがいくつか行われた基調講演で、アラムとミューラーは、SAP による次の 50 年のイノベーションについての展望とともに、SAPのベスト・オブ・ブリード・ソリューションの価値をアピールしました。
基調講演をさらに輝かせるには、SAP の共同創業者であり、最近 SAP スーパーバイザリーボード会長を引退したばかりのハッソ・プラットナー (Hasso Plattner) ほど、ふさわしい人物はいないでしょう。アラムとミューラーはともに講演の中でプラットナー元会長の名前を挙げました。そして、ミューラーは、SAP のレガシーと将来へのビジョンを語る際、プラットナー元会長からのお別れのメッセージを引用しました。「イノベーションを続け、限界に挑戦し続け、お客様と広く世界の人々の生活に変化をもたらし続ける」のだと。
イノベーションを続ける
SAP Product Engineering の責任者として初めて SAP Sapphire の舞台に登壇したアラムは、ビジネス機能全体をエンド・ツー・エンドでつなぎ、真の価値を解き放つためにイノベーションを活用することの重要性について説明しました。
簡単に言えば、企業は製品やサービスを作って顧客に提供するために存在する、とアラムは語りました。しかし、このことを実行するために活用される材料、資産、人材、プロセスの組み合わせは簡単どころか複雑そのものです。「現実には、ビジネスのどの領域も互いに深く複雑に関連しています」と、アラムは語ります。ある領域の脆弱性はほかすべての領域に影響します。SAP のモジュラー型クラウド ERP のアプローチが成功している理由はそこにあります。「SAP は、デジタルトランスフォーメーションを装った単なるシステム統合プロジェクトではなく、真のデジタルトランスフォーメーションをお客様に提供しています」と、アラムは続けました。
そして、このコンポーザビリティと拡張性の具体例として、GROW with SAP を紹介しました。GROW with SAP はさまざまな規模および業種の企業に対応し、状況に応じて拡張していくことができるオファリングです。今回、SAP Sales Cloud と Concur Expense が GROW with SAP にネイティブ統合され、さらに包括的になりました。SAP のクラウド ERP、UX 担当プロダクトマネージャーであるシニット・フォト (Sinit Foto) は、アラムとともにステージに上がり、GROW with SAP と SAP Business AI がどのようにプロセスの統合に役立つか解説しながら、販売見積もりに関する顧客とのコミュニケーション、経費報告書の作成、財務分析のサポートといったユースケースのデモを行いました。実際 SAP では、世界中の販売状況を管理するために、デモで紹介したアプリケーションを社内で利用しているとアラムは説明しました。ミューラーも次のように述べています。「私たちは、これまで考えられなかったようなビジネス成果を生み出すことで、この AI 変革の瞬間にいるお客様を支援することをお約束します。だからこそ、SAP Business AI を当社のプロセスとアナリティクスに深く組み込んでいるのです」
挑戦し続ける
AI は基調講演全体を通してのトピックであり、アラムとミューラーはこの分野における SAP の戦略と製品強化について語りました。AI が真にビジネスのあり方を変革するには、高い価値を持ち、ワークフローに導入しやすく、信頼できるものでなければなりません。「同様に、データは、そのセキュリティとプライバシーが保護され、責任ある方法で実行されることが重要です。そしてそれこそが、SAP Business AI の核となる約束なのです」と、アラムは付け加えました。
AI が強力なテクノロジーであることは間違いありませんが、だからこそ、企業はAIを単なる「チャンス」ではなく「責任」として捉えることが必須だとアラムは言います。SAP SuccessFactors のエグゼクティブ・ソリューション・アドバイザーであるミーガン・ファイフ (Megan Fife) は、SAP SuccessFactors HCM で SAP AI コパイロットである Joule が、不足スキルの補充、チーム間のコラボレーションといった、有意義なタスクの中でどのように役立つかをデモで示すことで、SAP が、責任ある、信頼性、関連性の高いビジネス AI をどのように活用しているか紹介しました。この試みの鍵となるのが、同日先に発表された SAP と Microsoft とのパートナーシップの拡大です。Microsoft のクラウド& AI担当エグゼクティブバイスプレジデントであるスコット・ガスリー (Scott Guthrie) 氏は、ステージ上でアラムと、このパートナーシップ拡大について意見を交わしました。
ミューラーは、責任ある AI の重要性を強調し、この技術は信頼性の高いデータに大きく依存し、この技術によって顧客はビジネスをエンド・ツー・エンドで見られるようになると説明しました。SAP のデータ&アナリティクス担当プロダクト・マーケティング・マネージャーであるオーラ・カレン (Orla Cullen) がデモで紹介した SAP Datasphere と SAP Spend Control Tower は、データ管理をシンプル化し、支出データとサステナビリティデータを総合的に表示・管理することができます。
この変革は SAP Business Technology Platform (SAP BTP) によってサポートされているものです。ミューラーは SAP Analytics Cloud、SAP Integration Suite、SAP Build ソリューションにおける最新の生成 AI 機能をデモで紹介しました。ミューラーは、チーム管理のための財務レポートの作成と要約、SAP と SAP 以外のアプリケーション間の統合フローの構築、特定のビジネスニーズに基づくカスタムスキルとコンテンツの開発を Joule がどのように支援するのかを示しました。結果、インサイトの精度が高まり、レスポンスが早くなり、生産性が向上します。さらにミューラーは、SAP Build を使用してカスタムスキルを開発し、コパイロットが SAP および SAP 以外のシステム上のデータをやり取りできるようにすることで、Joule のナレッジを強化・拡張し、ビジネスのさらなる効率化を図ることも可能になると付け加えました。
SAP BTP は、常にイノベーションを意識しながら、clean coreを維持し、標準的なオファリングを独自のニーズに合わせてカスタマイズするための鍵になっている、とミューラーは言います。Blue Diamond Growers 社や Lufthansa Technik 社など、事業運営に SAP BTP を利用している 24,000 社以上の企業がこれを実証しています。
「SAP BTP の拡張性とエンタープライズオートメーション機能は、プロセスに関するインサイトを実際の改善につなげるのに役立ちます」と、ミューラーは話しました。SAP BTP のプロダクトマネージャーであるセシリア・ウェルゴ (Cecilia Huergo) は、SAP Signavio ソリューション、SAP LeanIX、SAP BTP、ABAP Cloud を組み合わせることで、改善の機会を見つけ、clean core を維持しながら必要な変更を行い、IT ランドスケープの最新ビューを得られることをデモで紹介しました。
変化をもたらし続ける
アラムとミューラーの基調講演でトピックとしてその名が挙がり、実演されたいくつかのイノベーションは、2024 年の SAP Sapphire で発表されたその他多くのイノベーションとともに、お客様の可能性を最大限に引き出すという SAP の取り組みにおける新しい一歩に過ぎません。「未来はいつも目の前にあり、最初にイノベーションを起こす人によって定義されます。私たちは、お客様が今日だけでなく明日もリーダーでいつづけられるよう、適切なツールを提供するためにここにいるのです」と、ミューラーは語りました。
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