(本記事は、10月18日に本社で掲載されたものです)

ゼロからのスタート」と言えば聞こえはいいですが、特に大規模な多国籍企業にとっては、実に大胆な決断です。しかし、数十年にわたり SAP ご利用いただいているある企業が、お客様からの業務スピードアップの要求と明確なミッションに突き動かされ、ゼロからのスタートを決断しました。

「当社のミッションは、お客様の迅速な事業展開を支援することです」と、株式会社日立ハイテク(以下、日立ハイテク)のデジタル推進統括本部 統括本部長である酒井拓哉氏は、昨年の SAP TechEd の基調講演に登壇後、 SAP Winning Insights ビデオで述べています。「また、当社の企業ビジョンは、お客様の業務プロセスをシンプルにすることです」

東京に本社を置く、株式会社日立製作所のグループ会社である日立ハイテクは、スピードとシンプル化の向上を目指し、ソリューションアーキテクチャーの変更にとどまらず、SAP S/4HANA® へのグリーンフィールド移行を選択しました。つまり、同社固有のニーズに合わせてカスタマイズした新しい環境を設計・構築することになったのです。

そして同社は、ナノテクノロジー、分析、医療、その他の事業分野における顧客のハイテクプロセスをシンプル化することを目的とした、野心的なデジタル・エクスペリエンス・プログラムを通じてこれを実現しました。

How Hitachi High-Tech Accelerates Business Operations With Cloud Tech

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How Hitachi High-Tech Accelerates Business Operations With Cloud Tech

グリーンフィールドに飛び込む

日立ハイテクは 1990 年代からグローバルビジネスの基幹システムとして SAPⓇ ERP を稼働させ、数十年にわたる円滑な運用と実装を実現するとともに、地域ごとのニーズに合わせた開発も行ってきました。しかしその結果、レポートや入力画面、さらには複雑な製造関連プロセスまで、カスタムメイドの機能を実現するために数十年にわたって追加されたコーディング、つまりアドオンが約 9,000 個にも上っていました。

アドオンは、ユーザーが特定のタスク用にソフトウェアをカスタマイズするのに役立ちます。しかし、特に長期間にわたって使用し続けると、扱いにくくなり、組織の敏捷性や順応性を妨げる可能性があります。

「デジタル・エクスペリエンス・プロジェクトの後、私たちはレガシーシステムにあるすべてを新しい SAP S/4HANAⓇ プラットフォームに移行するのではなく、グリーンフィールドに飛び込む決断をしました」と酒井氏は述べています。「私たちはプロセスもテクノロジーも変えたのです」

グリーンフィールド移行、つまり、既存のデータやカスタマイズを移行せず、ほぼ白紙のキャンバスに新しいシステムを導入することで、日立ハイテクは 9,000 個のレガシーアドオンをわずか 800 個のアドオンに削減することができたと酒井氏は述べています。また同社は、SAPⓇ Business Technology Platform (SAP BTP) を利用し、新しいアドオンの大半を Side-by-Side 開発とすることで、コードを変更せず、修正を最小限に抑え、安定性、俊敏性、スピードを確保しました。

また、酒井氏によると、日立ハイテクは SAP S/4HANA へのアドオン開発を完全に停止しました。

2 層構造で 1 つのクリーンコアを実現

日立ハイテクは、グリーンフィールドに 2 層モデルを構築しました。1 層目には、海外の中小規模の販売支店向けに比較的シンプルな ERP ツールを使用するための SAP S/4HANAⓇ Cloud Public Edition を導入し、2 層目には、国内の大規模製造拠点向けに SAP S/4HANA Cloud Private Edition を導入しました。

「SAP BTP での Side-by-Side 開発により、アップグレードは迅速化され、社員は改善された機能にすぐにアクセス可能になります」と酒井氏は述べています

また、カスタマイズが進み、煩雑になったレガシーシステムから SAP S/4HANA Cloud に移行することで、柔軟性、スピード、セキュリティが向上したと酒井氏は説明します。これは、需要が急増した場合や、より頻繁にアップグレードが必要になった際に特に効果を発揮します。

しかし、この 2 層モデル間でもデータのやり取りが必要です。ここで SAP BTP の出番となります。

「2 つの ERP を統合する必要があるため、2 層間に SAP BTP を設置しました」と酒井氏。「SAP S/4HANA のコアはクリーンに保つため、SAP BTP をビジネスハブおよび開発基盤として使用しています」

シンプルでスマートなデジタルプロセスの構築

「SAP BTP を使用すれば、SAP S/4HANA のコアに手を加えることなく、シンプルでスマートなデジタルプロセスを構築できます」と、酒井氏は SAP TechEd の基調講演にて述べています。「SAP BTP は、ユーザーに新しい機能をすぐに提供できるという点で、非常に強力なプラットフォームです。SAP BTP は当社のビジネスを加速させる上で非常に重要なものであると考えています」

酒井氏は、この変革により、日立ハイテクの社員は新しいプロセス、画面、レポート機能に慣れる必要がありましたが、最終的にはすべてのオフィスがデジタルで接続され、非常に大きなメリットを生みました、とSAP TechEd で日立ハイテクのグリーンフィールド変革についても述べています。

「このビジネスケースこそが、変革における『最も重要』なことです。SAP は単なるソフトウェア企業ではなく、変革をもたらす企業なのです」と述べた後、「もちろん、システムもとても重要ですよ」と笑顔で付け加えました。