企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、人事に求められる役割も変わりつつあります。
制度や仕組みを整えること自体が目的になるのではなく、経営戦略をどのように実行していくのか。その中で人事はどのような基盤を提供できるのかが問われています。

いすゞ自動車では、事業環境や競争環境が変化する中で、企業として適切に対応し成長していくことを前提に、人事の在り方を見直してきました。
本講演では、いすゞ自動車 人事部門 VP の 武田 修氏 と、人事部門人的資本戦略 Gr HRiS / DX マネージャーの 戸部 勇太氏 が登壇し、経営戦略を起点に進めてきた人事変革の考え方と、その実行プロセスについて語りました。

〇ご登壇者
いすゞ自動車株式会社
人事部門 VP
武田 修 氏

 

 

 

 

 

いすゞ自動車株式会社
人事部門 人的資本戦略 Gr HRiS / DX マネージャー
戸部 勇太 氏

 

 

 

 


経営戦略から人事を考える

講演で繰り返し示されたのは、まず経営戦略があり、その実現のために人事をどう設計するかという考え方です。企業としてどこへ向かうのか。そのためにどのような仕事が必要で、どのような人財が求められるのか。人事はその問いに応えるための基盤として整理されています。

特徴的なのは、人からではなく職務から考える姿勢です。世の中とつながる仕事、実際に存在する職務を起点にし、それを積み上げることで組織を構成していくという考え方が示されました。職務記述書は個別に作るものではなく、上位のミッションからカスケードされ、全体として会社そのものを形づくるものとして整理されています。

UD トラックスとの統合を通じた人事の再構築

いすゞ自動車の人事変革を語る上で欠かせないのが、UD トラックスとの統合です。
UD トラックスは、長年にわたり、北欧を本拠とするボルボ・グループ傘下の企業として、職務を軸とした人事制度やグローバルで通用する仕組みを持っていました。

講演では、UD トラックスの制度を単純にコピーするのではなく、その考え方や構造を理解した上で、お互いの良いところをいすゞ自動車の人事に取り入れている点が強調されました。日本と北欧という異なる文化を前提にしながら、共通の基盤をつくることで、グローバル企業としての人事を目指していることが示されています。

人事部門は、両社が一体となることを前提に先行して統合されました。職務や制度、運用の基盤を共有することで、共通の物差しで対話し、意思決定できる状態をつくることが狙いです。人事そのものが、統合を進めるための起点になっている点が印象的でした。

HRiS を人事運用の中核に据える

こうした統合を現場で機能・定着させるために、人事運用の基盤として位置づけられているのが SAP SuccessFactors で構築中の新人事システム(HRiS)です。

HRiS は人事部門の管理ツールではなく、職場や部門が使うことを前提にした仕組みとして位置づけられています。職務、評価、報酬、キャリアといった情報を一元的に扱い、現場が考えるための材料を提供する基盤です。

いすゞ自動車と UD トラックスという異なる背景を持つ組織を受け止めるためにも、HRiS は共通の基盤として設計されています。Fit to Standard の開発方針のもと、過度な個別対応を避けながら、グローバルで通用する人事基盤を整える取り組みが進められています。

HRiS を通じて、個人は自らの職務やキャリアを理解し、組織は必要な人財やスキルを把握することができます。人に依存した運用ではなく、基盤によって支えられた人事を実現しようとしている点が特徴です。

段階的に進めるグローバル企業への道

講演では、組織の変化は一足飛びには進まないという認識も示されました。
信頼や価値観の共有には順序があり、段階を踏んで積み上げていく必要があります。制度やシステムを整えた上で、それをどう使い、どう根づかせていくか。その試行錯誤の中で、人事基盤を整えながら変革を進めていく姿が語られました。

経営戦略を起点に人事を組み替え、UD トラックスとの統合を通じてグローバルな基盤をつくる。HRiS を中核に据えた運用を行う。これらの取り組みは、いすゞ自動車がグローバル企業として成長していくための重要な土台となっています。

おわりに

経営戦略を起点に人事を組み替え、UD トラックスとの統合を通じてグローバル企業としての基盤づくりを進める。いすゞ自動車の取り組みは、制度やシステムの刷新にとどまらず、経営と人事の関係そのものを見直そうとする試みと言えます。

本記事では、その考え方や全体像の一部をご紹介しましたが、講演では、こうした人事変革をどのような順序で進めてきたのか、どこに難しさがあり、何を判断軸としてきたのかについて、より具体的な背景やエピソードを交えて語られています。
人事制度改革や人事基盤の再構築、グローバル企業としての人事の在り方に関心をお持ちの方にとって、多くの示唆が得られる内容です。
現在、講演のオンデマンド動画をご覧いただけますので、ぜひ詳細をご確認ください。

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