2022年10月21日に日本の製造業界の経営層をはじめ、サプライチェーンに携わる管理職の方々をお招きして開催されたSupply Chain Transformation 2022「事業成長戦略としてのサプライチェーン改革」。 本ブログでは、SAP ドイツ本社でDigital Supply Chainの製品開発責任者を務めるドミニクによる講演内容についてお伝えします。
デジタル活用によって実現する即応性が高く持続可能なネットワーク型サプライチェーン
なぜ今、サプライチェーンの変革が必要なのか
川崎重工業の酒井氏に続いて登壇したのは、SAP ドイツ本社でDigital Supply Chainの製品開発責任者を務めるドミニク・メッツガーです。最初にメッツガーは、グローバルな視点からサプライチェーンの変革が急務となっている現在の状況について言及しました。
「COVID‑19が猛威をふるったこの2年間で、私たちはグローバル・サプライチェーンの寸断が大きな混乱をもたらすことをあらためて認識させられました。例えば、半導体不足による工場の操業停止や出荷の遅延、輸送コストの高騰、人手不足などが世界中で発生しました。こうした状況で求められるのは、優れた回復力を備えたレジリエントなサプライチェーンです」 メッツガーは、レジリエントなサプライチェーンを構築するための戦略には、4つの重要な側面があると指摘します。それは、市場の動きを予測しながらサプライ駆動で動く「俊敏性」、工場をサイロ化させることなくエンジニアリングと製造が密に連携する「生産性」、取引先やパートナー、顧客と協力関係を築く「連携性」、地球環境や地域社会への影響を機動的に管理する「持続可能性(サステナビリティ)」です。
デジタルサプライチェーンによるレジリエンスとサステナビリティの両立
SAPのデジタルサプライチェーンは、計画と実行を同期化し、ものづくりと物流の体制を再構築しながら、これら4つの戦略をバランスよく推進します。メッツガーは「サプライチェーンは1つの側面からだけでは解決できない」と話し、設計から運用に至る包括的なオペレーションを支えるSAPのデジタルサプライチェーンによって、何が可能になるかをデモで示しました。
まず、物理的な世界をデジタルで再現した「デジタルツイン」によって、サプライチェーンのすべてがデータ化され、これにより原材料不足や出荷の遅延といった混乱が可視化されます。メッツガーは「ここでは、混乱による影響を体系的に分析することが極めて重要です」と強調します。 SAPのデジタルサプライチェーンでは、影響を受ける製造指図や受注品目、最優先の顧客の特定などをERPの情報も活用しながら分析し、原材料不足を補うための再購入先の特定、生産の他拠点への移行といった代替案を提案します。
そして、これらのシミュレーションを実行し、プランごとの利益率やCO2の排出量なども算出することで、修正計画による影響を十分に理解した上でのインテリジェントな意思決定が可能になります。修正計画はリアルタイムでサプライヤーや製造現場に共有され、速やかに実行されます。まさに俊敏性のある、レジリエントなサプライチェーンが実現するということです。
幅広い業界に新たな価値をもたらすSAPのデジタルサプライチェーン
メッツガーは、SAPのデジタルサプライチェーンを活用したいくつかの先進事例も紹介しました。 ハードウェア事業におけるサプライチェーンのプランニングと受注処理のパフォーマンスが課題だったMicrosoftでは、SAP IBP(SAP Integrated Business Planning for Supply Chain)を導入によって予測能力の精度を高めることで、エンドツーエンドの高度なデジタルサプライチェーンを再構築しました。 また、フルーツジュースを扱うDöhlerでは、SAP Business Network for LogisticsとSAP S/4HANA Supply Chain で取引先との物流をデジタル化し、バリューチェーン全体の透明性を大きく向上させることに成功しています。 この他にも、家具で用いられるラミネート材などを扱うArpa では、SAPのダッシュボードや予測分析によってベストプラクティスを特定することで、水やエネルギーなどの資源消費量を80%削減するなど、生産性向上とサステナビリティの両立を実現しています。 最後にメッツガーは「これらリーダー企業の成功事例からもわかる通り、SAPは計画と実行、工場とERPを紐づけながら、これからもレジリエントなサプライチェーンへの変革を力強く支援していきます」と話し、講演を終えました。
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