HR Connect Tokyo 2026 レポート
グローバルでフードサービス機器事業を展開するホシザキ株式会社は、 SAP SuccessFactors を活用し、「Fit to Standard」の考え方で人事給与業務の標準化に取り組んでいます。 2026 年 7 月 29 日に開催された『HR Connect Tokyo 2026』では、人事部 部長の清水 恭子氏、人事制度課 主事の冨江 圭佑氏、導入を支援した株式会社DTSの森 貴寛氏が登壇し、プロジェクトの目的や現場で直面した課題、標準化を進める上での取り組みについて語りました。
〇 登壇者
ホシザキ株式会社
人事部 部長
清水 恭子氏
ホシザキ株式会社
人事部 人事制度課 主事
冨江 圭佑氏
株式会社DTS
テクノロジー&ソリューションセグメント
法人ソリューション事業本部
HCM事業部 担当課長
森 貴寛氏
海外売上高が過半を占めるグローバル企業へ成長、人事基盤の整備が課題に
1947 年に設立されたホシザキは、製氷機、冷蔵庫、食器洗浄機、ディスペンサーなどのフードサービス機器の研究開発から、製造、販売、保守サービスまでを提供する企業です。 2025 年 12 月末現在、国内では 15 の販売会社と 426 カ所の営業拠点を有し、営業とサービス担当者が顧客のもとへ直接足を運ぶ体制を構築しています。(図 1 参照)
(図 1)

一方、グローバルでの事業拡大も進んでおり、 2025 年 12 月末現在、グローバルに 49 社の主要会社と 30の工場を展開しています。また、海外売上高も 2024 年に初めて 50 %を超え、翌 2025 年には過去最高の 53.3 %に達するなど、飛躍的な成長を遂げています。社員数もグローバル全体で約 1 万 7,000 人に拡大、そのうち日本が 9,000 人弱、海外が 8,000 人ほどと、およそ半々の構成になっています。(図 2 参照)
(図 2)

このような事業環境の変化を背景に、ホシザキが 2019 年から着手したのが、ホシザキおよび国内 15 の販売会社が使用していた人事給与システムの刷新でした。当時のシステムは老朽化や多くのカスタマイズによる複雑化が進んでいたといいます。そうしたことから、制度変更や法改正への柔軟な対応が難しくなっており、次の経営ビジョンへの対応をはじめ、デジタル化や働き方改革を支援する人事基盤が求められていました。(図 3 参照)
(図 3)

「刷新にあたって重視したのが、システムに業務を合わせる『Fit to Standard』です。既存の業務をそのまま新システムへ移すのではなく、業務そのものを見直し、システムの標準機能をできる限り活用する方針を採りました」(清水氏)
また、新システムを選定するにあたっては、「給与計算を中心とした人事給与システムにとどまらず、将来的にはタレントマネジメントやパフォーマンスマネジメントにも拡張できること」「各社各様だった業務をスリム化・標準化し、グループ統一で利用できること」を要件として掲げました。(図 4 参照)
(図 4)

旧システムでも、紙で保存されていた社員情報を統一されたフォーマットに集約し、人事情報を一元管理できるようになったことや、紙で行っていた業務を電子化できたことなど、一定の成果を上げていたといいます。しかし、その一方で、各社それぞれの給与運用をシステム化することができず手作業が残り、ヒューマンエラーにつながる可能性も生じていました。また、複雑なアドオンを繰り返した結果、法律や制度が変わった際に柔軟な対応が難しくなっていたといいます。(図 5 参照)
(図 5)

SAP SuccessFactors の標準機能を活用し、業務負荷を大幅に削減
これらの課題解消に向け、ホシザキは複数のシステムを比較検討します。その結果、機能や将来性に加えて、導入後の維持管理のしやすさを評価して選ばれたのが、 SAP SuccessFactors です。標準機能でカバーできる業務が旧システムより多く、規程や運用を変更することでシステムをそのまま利用できる領域も多いことも、採用を後押ししました。
SAP SuccessFactors 導入後は、業務効率化でさまざまな効果が表れています。はじめに業務負荷の削減です。当初計画では、人事給与にかかる業務で 1 万 1,800 時間の削減を見込んでいましたが、目標に近い 90.6 %の達成率となる 1 万 700 時間の削減を実現できました。(図 6 参照)
(図 6)

実務担当者へのアンケートでも、自動化できる業務が増えたことや手作業が減ったことが高く評価されています。(図 7 参照)
(図 7)

「人事基盤」をベースに人的資本の活用を推進
ホシザキは、 SAP SuccessFactors の導入を人事戦略そのもののゴールとは位置付けていません。今後も同社社員の「勤勉実直」というポジティブ面を最大化するために、人事制度改革、人材育成、意識・風土改革を進めるとともに、社員の働きやすさや仕事のやりがいの向上にも取り組み、企業価値の向上につなげていく考えです。(図 8 参照)
(図 8)

SAP SuccessFactors の導入により業務の標準化を達成したホシザキですが、人事変革はフェーズ1を終えたばかりであると捉えています。(図 9 参照)
(図 9)

「今後も人事情報の拡充・高度化を進め、人的資本を最大限に活用するための基盤としてSAP SuccessFactors を発展させていく方針です。そのためにも、まずは導入した SAP SuccessFactors を『使い倒す』ことが重要と考えています。使い勝手の向上に向けて『テックタッチ』を既に活用していますが、勤怠管理においてはチームスピリットの導入も検討しており、これらの仕組みも活用しながら引き続き人事変革を推進していきます」(清水氏)
SAP SuccessFactors を「水道管」に例え、経営層の理解を獲得
講演の後半では、 SAPジャパンの舩場 智代をファシリテーターに、ホシザキの冨江氏、DTSの森氏を交え、導入プロジェクトの現場で経験した苦労や、標準化を実現するための工夫について対談が行われました。
最初に話題に上ったのが、人事給与システムの刷新プロジェクトを立ち上げる際に、どのように経営層から投資への理解を得たのかという点です。
「SAP SuccessFactors 導入のきっかけは、旧システムの保守切れが迫っていたことです。しかし、『単純にシステムを入れ替える』という説明では、経営層から『まだ使えるのではないか』『保守を延長できないのか』といった反応が返ってくるだけでした」(冨江氏)
そこで、 SAP SuccessFactors 導入後に業務がどのように変わり、人事給与システムに携わる人員がどのように適正化されるのかを、 SAPやDTSと議論しながら整理し、経営層への説明を重ねていきました。しかし、これまでの他の業務システム導入において、想定したような効率化が図れなかったことを指摘されるなど、なかなかゴーサインを得られなかったといいます。
そうした中で経営層からもらえたヒントが、 SAP SuccessFactors を「水道管」などのインフラに例えた考え方です。
「今回の投資を効率化投資ではなく、水道管を変えるインフラの投資として考え、水道管を今まで以上に太くすればこれまで流せなかったものを流せるようになる。つまり、クラウド化を通じてインフラが拡張できれば、今までできなかったことが、できるようになる。そうした観点に基づいて提案してみたらどうか、とヒントをもらえました。加えて、システムに業務を合わせる標準化と効率化を進めるという方針を打ち出したことで、経営層の了承も得られ、プロジェクトに踏み出せるようになりました」(冨江氏)
権限委譲により、プロジェクトの進行が一気に加速
また、標準化を進めるにあたって挙げられた方針が、「徹底的に AS – IS をやめる」というものでした。旧システムは長年の運用を続けた結果、「なぜその設定になっているのか」「なぜその業務を行っているのか」が不明になっている部分が多々生じていたといいます。そこで、新システムでは従来の業務をそのまま再現するのではなく、標準機能を前提に業務の見直しにも取り組みました。
「ただし、プロジェクトを進める中では、システムに合わせることでホシザキの文化や業務プロセスの変更が必要な場面も生じました。その適否を誰が判断し、誰が承認するのかといった権限の整理にも時間を要し、要件定義は大幅に遅延しました」(冨江氏)
こうした状況を変えたのが、当時のプロジェクトオーナーと IT 部長からの権限委譲でした。冨江氏が判断できる範囲が明確になったことで、その後のプロジェクトは大きく前進したといいます。
プロジェクトの成功にはパートナーとの「本音のコミュニケーション」が不可欠
システム刷新を成功に導くためには、インテグレーションを担うパートナーとの関係づくりも重要です。ホシザキでは、パートナー選定の際に、 SAP から紹介された複数の企業と面談を実施しました。
その中では、過去のベンダーとのやり取りで感じていた課題も率直に伝え、「ユーザー側がパートナーさんから逃げたり、離れたりしたことはあるか」といった質問も投げかけたといいます。
「その際、DTSから返ってきたのは『そんなことは、あるわけがない。最後まで一緒にプロジェクトやタスクに取り組み、どんな問題からも逃げずに解決に導いていきます』という心強い回答でした。このような姿勢が、同社をパートナーとして選んだ決め手の 1 つになりました」(冨江氏)
「振り返れば、プロジェクトの成功要因には、『密なコミュニケーション』があったと思います。定例会だけではなく、必要に応じて Web 会議を行うなど、頻繁にコミュニケーションを取ったことで、ホシザキ様の本音や考えていることを真に理解できたと考えています」(森氏)
標準化の推進により、業務に携わる社員の意識も変化
プロジェクトを通じてホシザキの社内に生まれた変化は、「あるものをしっかり使う」という文化が醸成されたことです。人事給与システムだけでなく、製造や営業などさまざまな領域でシステムの刷新が進む中、「自分たちがシステムに合わせる」という考え方が社内に根付きつつあるといいます。
「トップ自らが、新システムに業務を合わせることを促す場面も生まれています。また、社員の側にも、『いい意味での割り切り』が生まれました。すべてをシステムに実装しようとするのではなく、限られた時間の中でどこまで実現するのかを考えられるようになったほか、『なぜそれが必要なのか』を考える意識も浸透してきました」(冨江氏)
先にも述べたように、ホシザキは現在、人事基盤を整備するフェーズ 1 を推進している段階であり、引き続きタレントマネジメント、キャリア開発、パフォーマンスマネジメントを推進していく計画です。
「そのためにも、まずは、導入したシステムをしっかり使い倒していくことが重要だと捉えています。その上で、他社の取り組みからも学びながら、われわれにとって必要な仕組みを、適切なタイミングで導入し、さらなる人事給与業務の変革に取り組んでいきたいと考えています」(清水氏)
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