Did you know 「C2モントリオール」?

「C2モントリオール」とは、今や世界最大規模のクリエイティヴ・ビジネス・フェスティバル「SXSW(サウスバイサウスウエスト)」に比肩するコンテンツと囁かれ始めているビジネスカンファレンスで、元々C2という名も、Creativity(創造性)とCommerce(商業)が交差する点を標榜し、現代社会が抱える多様な課題に対し革新的かつ実用的なソリューションをもたらす発信源となることを意図して名付けられた。

このような商業的な成功を収める一方で、「C2モントリオール」は非営利団体であるが故に政府の予算に依存していたため、潜在的な顧客ニーズの開拓やこれらのノウハウのグローバル市場展開に制約があった。彼らが手掛ける「ビジネスカンファレンス」のポテンシャルとグローバル市場でのニーズとのギャップから、「C2モントリオール」の取締役会で意思決定され民間企業のC2 インターナショナル”が生まれた。

日本では、デザイン思考の先駆者であるIDEOやSID LEE、Beworksが合流した日本のクリエイティヴ共同体「kyu」に合流した企業のひとつと言った方が分かりやすいかも知れない。または、シルク・ドゥ・ソレイユを世界規模に共に育てた広告会社(SID LEE)として聞いたことがある方もいるかも知れない。SID LEEも「kyu」傘下の企業の中で唯一の広告会社で、特に体験型のプラットフォームづくりやアクティベーション開発に強みを持ってる企業だ。この「kyu」は、日本最大級の広告代理店である博報堂DYホールディングスの戦略的事業組織で、北米・欧州を主たる対象エリアとして、最先端でユニークなクリエイティブサービスを数多く生み出している企業のM&Aを行い、“専門性”と“先進性”を継続的にグループ内へ取り込む機能を担っている。日本のクリエイティブ集団も目を付けていた「イケてるカンファレンスビジネスを展開する会社」が彼らだとも言える。

C2 インターナショナルの特徴

C2インターナショナルは、「C2モントリオール」ブランドの使用を認可された非営利の民間企業であり、C2モントリオールの新しいサービス提供や市場開拓から利益を得ている。ただ、今では「C2モントリオール」自体の海外企業とのパートナーシップ数も増加しており、このパートナーシップ契約とチケット販売などの収益により、政府予算の制約を受けることなく企画・運営が可能になっている。加えて彼らはこれらノウハウを「C2モントリオール」以外のビジネスカンファレンスに展開するという発想で2012年に創業した。

彼らのミッションステートメント:

  • 民間企業のイベントの企画
  • 企業向け会議場の開設(会議・イベントセンター)
  • 北米以外のC2モントリオールに似たイベントの制作

彼らの掲げるビジョンがどんなモノかは見た方が理解しやすいだろう。

C2 International: ビジネスカンファレンス業界をリードする C2 International のクラウド戦略

CEOのリチャードは、参加者に問いかけます。

”50フィート空中に浮遊するワークショップに参加したことはありますか?”

”あなたの子供はブレインストーミングセッションに参加するように招待されましたか?”

これらの問いからも、主催者と参加者、または参加者同士が相互に結びついた世界を実現しようとしているが分かる。そんな彼らは、自身のことを以下のようにも表現してる。

”私たちは、ビジネスに自分が望むものを発見させるためのカタリスト(触媒者)で、(ビジネスカンファレンスを通じ)参加者同士のアイデアのコリジョン(衝突)を促進し、参加者と共に成長することを意図しています”

Richard St. Pierre, President, C2 International LLC

動画を見て気付いた方もいると思うが、シルク・ドゥ・ソレイユが観客と一体となって体験できる仕組みを提供しているように、彼らも同様の体験をビジネスカンファレンスに持ち込んでいる。(SAPとシルク・ドゥ・ソレイユの取組みはこちら

ビジネスカンファレンスというと企業側の文脈を参加者に一方通行で伝えることが多い中、B2Cを代表する小売業などが”人と人との経験を通じて得られる共感を重視”しているパーソライゼーション戦略と同様に、C2は同様のコンテキスト(文脈)を確実にB2Bビジネスの世界に展開している。それだけ出なく、その体験から得た共感は、参加者自身をカタリスト(触媒者)に変え、彼らのエコシステム形成し、さらにスケールさせようとしている。SNSなどで自身の体験が即座に共有される今の世界観において、このような共感を軸としたビジネスモデルは、他国へビジネスを展開する機会を得やすいと言えるだろう。彼らも、そのことを理解しており、ヨーロッパからアジア、中東にも展開計画を持っている。

SAPとのジャーニー

このビジネスモデルにおいて重要なのは「伸縮を繰り返す柔軟性と拡張性」を合わせ持つことだった。イベント単位にスタッフ数が増減するため、通常の30名のスタッフは最大600名まで拡大する。その増加に伴い、当然、調達から支払などの業務トランザクションも増加することになる。支払処理などは「数千件/日」にもなると言う。北米以外への展開を考える彼らとしては、柔軟性と拡張性を合わせ持つ必要があった。彼らのIT戦略も「100% Cloud Company」を掲げ、急速なビジネス展開をサポートできるクラウドソリューションを探していたこともあり、SAPに声が掛かったのがキッカケだった。

彼らが要求したのは以下だった。

  • 自身のビジネスモデルにフィットする100%クラウドソリューションの実現
  • 展開スピードの確保
  • 成長戦略を支える高い拡張性と信頼性

彼らのビジネスモデルにフィットする100%クラウドソリューションの実現

上述のビジネスを支えるソリューション提供とバックエンド業務の合理化が必須で、特にバックエンド業務は、数百人規模の新規スタッフと数千社規模の新規サプライヤを短期間でサポートできる必要があり、他地域への展開も担保できなければならない。この要求は以外と簡単でなく、彼らは「この5年間で4回も会計システムを変更する」事態を招いていたのである。

そんな彼らは、クラウド型ERPを採用し以下を導入効果として上げている。

  • 他のシステムと完全に統合された「リアルタイム・ビジネス」の実現
  •  利用者とトランザクション双方の規模拡大に対する処理能力
  • そして、北米・ヨーロッパ以外の地域への展開能力(アジア、中東など)

これら効果は、SAPが「SAP S/4HANA CloudのValue Proposition」として語っているポイントでもある。

スピードの確保

SAPとジャーニーを始めた彼らは、その後、導入パートナー企業ビヨンドテクノロジーズの協力の元、5週間で本稼働させた。導入工程における重要なステップが「Fit to Standard」だ。理屈は簡単で、すぐに動くシステムがクラウド上にあるので、従来のような時間がかかる要件定義やFit&Gap分析は行わず、クラウドに業務を合わせていくステップが「Fit to Standard」であり、スピード感を活かしたクラウド型ERPならではのメリットを活かしたものだ。

Source: SAP

ただ、「Fit to Standard」は手段に過ぎない。そのため、この手段をしなければならない(するべき)な明確な理由が必要になる。手段が目的化しがちの中で、このアプローチを有効化するための前提はキチンと理解しなければならない。

成長戦略を支える拡張性と信頼性

グローバル展開を視野に入れている彼らにとっての拡張性や信頼性とは、多言語他通貨対応や展開国での法改正対応などを想定していたが、それだけではなかった。彼らは、今回実現したビジネスプロセスを進化させる(インテリジェンス化する)文脈も含んでいたのだ。

業務処理の中で、単純に繰り返される作業などには自動化が推進されることは容易に想像が付くし機械学習による対話型デジタルアシスタント(チャットポット)などを用い従業員トレーニングの自動化や問合せ業務の自動化なども想像できるからだ。

「繰り返し業務と自動化する」ことを否定する人はいないだろう。ただ、「インテリジェント化」とは、単純な繰り返し作業以外にも積極的に適用箇所を探し、従来業務の在り方を再考していく意味が含まれている。RPAなどを用いて人手を介する作業の自動化などは着手している方も多いかも知れないが、ChatbotやAIなどを用い、従来の業務プロセスを再考するとなると、どこから検討すれば良いのか?など戸惑うことも多いはずだ。オペレーションが軽減されることに越したことはないが、何のためにやるのか?それが軽減できた暁にはその余力をどんな業務に仕向けるのか?など、手段だけを追いかける前に、検討すべきことはありそうだ。この点については、お客様との共創による検討アプローチ開発が必要そうだ。

最後に

彼らが掲げる「Live Business(その時その時に合ったサービスを提供するビジネス)」の実現」とは、時代と共に新陳代謝を繰り返すことを意味しているのではないだろうか。つまり、「手持ちは必要最小限のシンプルなモノとし、ニーズと共に必要なモノを増減させていく」といった感じだ。まさに、これはクラウドそのモノの発想であり価値でもある。これが「100% Cloud Company」を宣言する彼らが譲れないコアコ・バリューなのかも知れない。

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、C2インターナショナル社のレビューを受けたものではありません。