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2025年に向けてSAP S/4HANAへの移行が本格化している昨今、初期費用や運用コスト低減の観点からインフラ基盤のクラウド化が注目されています。今回は、SAP S/4HANAを含むSAPシステムに最適なシステムリソース一式を運用サービス込みで提供するマネージドクラウドサービス「SAP HANA Enterprise Cloud」(以下、HEC)のメリットはどこにあるのか、その理由と新たな取り組みを紹介します。

なぜ選ばれているのか

HECは、SAPシステムの運用に特化したPaaS型のクラウドサービスです。一般的なIaaSではインフラ基盤の正常稼動までがサービス提供範囲ですが、HECはインフラとSAPシステムの運用設計、環境構築、バックアップ、監視、可用性、災害対策といった運用に関するものをSAP自身がサービス提供致します。最大の特長は、SAP S/4HANAを中心としたSAPソリューションが正常に稼動して、「ユーザーがログインできる状態まで」を保証することにあります。一般的なIaaSの場合、SAPシステムにログインできずに業務が止まったとしてもベンダーのサポート範囲外となるため、原因究明やリカバリはユーザー自身が行う必要があります。しかし、HECではSAPシステムにログインするまでをSLAで担保。契約上では本番機で99.5%(最大99.9%)、非本番機で95.0%(最大99.0%)と定義しています。そのため、ユーザーは運用にリソースを割くことなくコア業務に集中することができます。

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HECが提供する価値とは

HECの価値は、インフラ基盤とSAPアプリケーション基盤の運用をSAPが一体となって提供することにあります。製品ベンダーであるSAPが運用するため、SAPの保守や運用部門との連携もスムーズで、さまざまな障害に対しても迅速に対応可能です。例えばSAP HANAは2011年のリリースから7年が経っていますが、SAP HANAに詳しいエンジニアの数はまだ多くないのが実情です。特に近年はSAP HANAをベースにしたアプリケーションが多く登場しており、変化のスピードに追従することは簡単ではありません。しかし、HECではSAP HANAの最新知識/技術に精通したエキスパートが最新の活用方法を提案し、運用実績に基づく最適なクラウド環境を維持します。

また近年、IT人材の不足が顕著になっています。SAPシステムのバージョンアップに際して検証に十分なリソースを確保できないという理由で古いバージョンのまま使い続けるユーザーが多かったことは、SAPの反省点でもあります。しかし、HECを活用すればSAP側で環境構築から運用までを一貫して行い、機能拡張やバージョンアップにも対応するため、エンジニア不足や未検証というリスクも回避できます。

セキュリティ専門部隊がすべての情報を収集して対処

起業システムをクラウド上で運用する際、欠かせないのがセキュリティ対策です。最近は、システムの脆弱性を突いたサイバー攻撃が基幹システムまで及んでいます。プロセッサーの脆弱性を狙う攻撃や、企業の重要情報を人質に身代金を要求するランサムウェアも増えています。これらに対処するためにはハードウェアからOS、ミドルウェア、データベース、アプリケーション、ウイルス対策ソフトまで、各ベンダーからあらゆる領域でセキュリティ情報を収集しなければなりませんが、自社対応には限界があります。そこで、HECではSAPのセキュリティ専門部隊(Vulnerability advisory service)が情報収集と影響調査を実施して、必要に応じてユーザーに通知~対策を行います。

システムを適正に運用管理していることを示すための国際認証や監査レポートも取得済みです。国際認証は、情報セキュリティマネジメントのISO27001、品質マネジメントのISO9001、事業継続マネジメントのISO22301に対応。監査レポートは、委託会社の財務報告にかかる受託会社の内部統制系のSOC1/ISAE3402/SSAE16と、受託業務における会社の各項目にかかるSOC2をカバーしています。

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HECプラットフォームとしてAWS、Azure、GCPも利用可能に

多くの社内システムを既にパブリッククラウド上で稼働させている、またこれから稼働させる予定である企業様が増えています。またシステムを利用する対象国における個人情報保護要件から、特定の拠点のデータセンターを利用する必要があるといった要望もございます。

これらの観点から、SAPシステムを含む企業システムを稼働させるプラットフォームとして、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といったパブリッククラウドサービスを希望されるお客様が増えております。

従来のHECは、世界各国のSAPのデータセンターを利用し、SAPがプラットフォームからアプリケーション基盤までをマネジメントするものでしたが、これらの要望に応えるべく、SAPではAWS、Microsoft、Googleとパートナーシップを締結し、HECのプラットフォームとしてパブリッククラウドを選択可能とするべく活動をしてきました。日本では「HEC with Azure」を2018年4月、「HEC with AWS」を2018年8月より提供中となっており、「HEC with GCP」についても2019年中のリリースを予定しています。

プラットフォームにパブリッククラウドを採用した場合でも、プラットフォームからアプリケーション基盤までをSAPがすべて運用し、SAPシステムにログインするまでをSLAで担保することに変わりはありません。既存のシステムとSAPシステムが稼動しているプラットフォームが同一基盤となることで、ネットワークが共通化され、SAPシステムと既存システム間の通信遅延などネットワーク品質やコストの課題を解消できます。

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運用ツールも進化中

運用サービスの領域でも機能を強化しています。HECではサービス利用状況について、月1度レポートを提供されますが、これらについてはSAP標準のサポートツールである「One Support Launchpad」の「Customer Dashboard」より、システム情報、OS情報、メモリー、CPU、ストレージの使用率、バックアップ状況、導入SAP Component詳細などについて、確認可能となっています。

また現在、お客様からのサービスリクエストに対して、その実行の自動化を進めております。これまで、クライアントコピーやサーバー再起動などについて、申請受付後、マニュアルでの処理が含まれていたため実行までのタイムラグが発生しておりました。そこでサービスリクエストの受付から実行、報告までを自動化し、リードタイムの短縮と品質向上を実現します。

なお、本稿にてご紹介させていただいた内容も含め、HECについての最新のロードマップについては、下記SAP公式サイトからダウンロード可能となっております。

https://www.sap.com/japan/products/roadmaps.html

HECは全世界で900社、1万9,000システムを超える運用実績があり、日本でも60社を超えるお客様にご採用を頂いております。今後も機能を強化しながら進化を続けていきます。