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2022年11月に行われた調達購買ソリューションを主軸とした「SAP Spend Connect Forum」では、「SAP Ariba」や「SAP Fieldglass」を活用し、調達・購買の変革を推し進める国内企業のキーパーソンが登場し、それぞれの取り組みについて明かしてくれました。その要点を3回に亘ってご報告いたします。初回は荏原製作所様とプラスカーゴ様による事例紹介です。

荏原製作所とプラスカーゴサービスがバイヤーとサプライヤーのパネルディスカッションを展開

SAP FieldglassやAribaのようなデジタルプラットフォームを活用した調達・購買プロセスの変革は、サプライヤーとバイヤーの双方が、その変革に必要性とメリットを感じ、能動的に取り組むことが成功の要件となります。

そうした観点から今回のSAP Spend Connect Forumでは「バイヤー企業とサプライヤー企業とをつなぐビジネスネットワーク」と題し、SAP Aribaのソリューションを使った業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)が、バイヤーとサプライヤーの双方にどのようなベネフィットをもたらすかに関するパネルディスカッションが展開されました。

本ディスカッションには、荏原製作所 業務革新統括部ビジネスプロセス革新部 間接業務変革課の大庭晴香氏がバイヤー企業として参加し、オフィス家具・用品を扱うプラスの物流子会社プラスカーゴサービスの統括本部兼営業開発本部 副部長、榎本真也氏がサプライヤー企業の立場で参加。モデレーターは、SAPジャパンインリジェントスペンド事業本部バリューアドバイザリーディレクターの小川美之が務めました。

荏原製作所では2020年4月にグローバルの調達機能を担う組織として、グローバル調達SCM部を設置し、SAP Aribaを用いて調達・購買業務の最適化に取り組んでいます。すでに国内グループ会社の8,000人弱がSAP Aribaを使った調達・購買を行っています。

一方のプラスカーゴサービスでは、プラスのみならず、さまざまな企業に向けてカスタマイズ型の物流サービスを提供しており、そのサービス展開を強化する一手として、SAP Ariba Networkを活用しています。

両社のうち、荏原製作所がSAP Aribaの活用を通じて主に目指しているのは、間接材調達・購買業務の「生産性向上」と「支出管理の徹底(持続的な支出削減)」「コンプライアンス強化」の3点です。これらの目標を達成すべく、同社では調達・購買業務の工数削減(=生産性向上)への寄与度が高い「カタログ購買」と「契約に基づく請求(の徹底)」の2点に重点的に取り組んでいると、大庭氏は明かします。

荏原製作所 大庭 晴香氏
荏原製作所 大庭 晴香氏
「カタログ購買については、すでに1,200点に及ぶカタログがSAP Aribaに登録されており、それらの横断的な比較検討を通じて最適な購買が行える環境が整えられています。また、SAP Ariba Networkを通じた『契約に基づく請求』によって、いわゆる『3点照合』が自動化され、調達・購買業務の省力化につながっています(図1)」(大庭氏)

図1:「SAP Ariba Network」を通じた「契約に基づく請求」による省力化
図1:「SAP Ariba Network」を通じた「契約に基づく請求」による省力化

 
もっとも、間接材の中には宅配系のサービスように調達・購買頻度が高いうえに、支払い条件(契約条件)が複雑で、SAP Aribaの環境を使った支払い条件の入力・設定がサプライヤー企業に大きな負担をかけるものがあり、その種の間接材に「契約に基づく請求」のルールを適用するのは実質的に難しいと、大庭氏は指摘します。

同氏によれば、こうした問題を解決するソリューションとして、荏原製作所は「CSV Invoice」の採用を検討しているといいます。そして、プラスカーゴサービスはすでにCSV Invoiceの仕組みをSAP Ariba Networkを通じた顧客との取引に適用しています(図2)。

図2:SAP Ariba NetworkとCSV Invoiceを使ったプラスカーゴサービスによる請求書処理のイメージ
図2:SAP Ariba NetworkとCSV Invoiceを使ったプラスカーゴサービスによる請求書処理のイメージ

 

プラスカーゴサービス 榎本真也 氏
プラスカーゴサービス 榎本真也 氏
「CSV Invoiceを使うことで、輸配送管理(請求)の業務を簡素化し、かつ正確性を上げることができます。こうした仕組みとSAP Ariba Networkの活用を通じて、物流サービスを使われるお客さまの発注から配送管理(請求処理)に至るプロセスも簡素化でき、お客さまの物流戦略の適正化にも貢献できると考えています」と榎本氏は語り、こうも続けます。

「SAP Ariba Networkの場合、複数のバイヤー企業とつながることもでき、このネットワークを経由して、新規のお客さまとの取引が始まるケースが出始めています。お客さまに直接セールスのアプローチをかけずとも、サービスの価値が認められ、案件受注につなげられるのはSAP Ariba Networkを使う大きなメリットと感じています」

この言葉を受けたかたちで、大庭氏はSAP Ariba、SAP Ariba Networkに対する期待感を次のように示し、話を終えました。

「SAP AribaやSAP Ariba Networkを活用した間接材調達・購買のプロセス変革は、バイヤー企業とサプライヤー企業との関係を変容させ、サプライヤー企業の営業スタイルをこれまでの『御用聞き型』から、プラスカーゴサービスのような『提案型』へとシフトさせると見ています。実際、当社とサプライヤー企業との関係性には、そうした変化が見られ始め、ともに間接材調達・購買の新しいプロセスを共創していこうといった機運も生まれつつあります。こうした共創の輪を広げることは当社が目指すところでもあり、今後は、SAP Ariba、Ariba Networkの活用をグローバルに押し広げ、サプライヤー企業を巻き込んだグローバルSCM(サプライチェーン管理)のあるべき姿を追求していきます」