2022年11月25日、“社会課題解決やサスティナビリティのための取り組みを見て、体験して、味わって、考えよう。”と題して「Society & Sustainability Festival」を開催しました。開催地となったSAP Experience Center Tokyoには社内外多くの方が集い、会場にお集まりいただいた方とオンライン視聴含め、大盛況の4時間となりました。こちらのイベントの様子を全4回にわたってレポートします。

レポートvol.3では、「2022Probono project成果報告会」と題したセッションの様子を詳細にお届けします。


2022Probono project成果報告会

SAPジャパンでは2021 年から様々なNPOや支援団体の方々と一緒にProbono(プロボノ)活動を行っています。プロボノは職業上のスキルや専門知識を活かして取り組むボランティア活動のことで、社員が社会課題の実態に直接触れて社会貢献への手ごたえが得られることや、SAPが貢献できる社会ニーズの種を探すことが期待されています。

企業のプロボノ活動を支援する認定NPO法人サービスグラント様に昨年から引き続きご協力いただいており、今年度は LGBTユースの居場所である「一般社団法人にじーず」、獣がい対策を行う「NPO法人里地里山問題研究所」、小児がんの子ども達を支える「認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク」と共に実施。この3 団体の方々から成果報告会という形で発表をしてもらいながら、SAPジャパンのメンバーがどのように貢献したのかを紹介していきます。司会は大森 純子さん(認定NPO法人 サービスグラント)にご担当いただきました。


一般社団法人にじーず

にじーずチーム

★にじーずチーム
発表者:木土敏幸、辻奈津子
メンバー:中村嘉子、下村絵梨、ラワットサントシュ、中村杏、山下亜紗子、安藤豪

一般社団法人にじーずは「LGBTの子ども・若者が安心して思春期をサバイバルできるつながりを作ること」をミッションに活動している団体です。10歳から23歳までのLGBT(かもしれない人を含む) の孤立を防ぐべく、彼らに当たり前の居場所を提供しようと2016年8月に任意団体として東京で発足。現在は全国8都市(札幌・埼玉・東京・新潟・京都・大阪・神戸・岡山)に展開し、毎月〜隔月1回の居場所事業を実施していますが、この拠点だけでは十分と言えず、全国に展開する必要性が見えていたそうです。

拠点を増やしても各居場所が自走していくことのできるような運用マニュアルが必要だということで、にじーずチーム(8名)が、リモートにて青少年施設のスタッフの方など多くの方にヒアリングし、マニュアル作りを実施。現場で活用しやすいように具体例や対応策を紹介するため様々なケーススタディを入れ、支援者に見ていただきながらブラッシュアップを繰り返し、結果約30ページの資料が完成。これをもとにしたワークショップも実施いただくことになったそうです。

発表後には、にじーず代表の遠藤さんからサプライズのビデオメッセージが。「みなさんのおかげで安心して使える青少年施設のための参考資料ができました。今後も、どんな子でも安心して過ごせる居場所が一つでも増えるよう活動していきたいです」と感謝のコメントをいただきました。


NPO法人里地里山問題研究所(petit prix)

さともんpetit prixチーム

★さともんpetit prixチーム
発表者:蘇有安、坂井志帆、丸山勝史
メンバー:後藤力、太田翠

里山には豊かな自然と調和した人の暮らしがあります。しかし近年は野生動物による農業被害など課題も多く、その対策や前向きな解決を目的に設立されたのがNPO法人里地里山問題研究所です。活動の中で地域の様々な交流が生まれ、そこから子育て・子育ち交流を目的と立ち上げた「プティプリ」事業が立ち上がりました。

「プティプリ」事業の活動内容は、旧こども園の施設を使った未就学児の親子を対象とした様々なイベントの開催です。とはいえイベント開催時は一時的に利用者が増えるものの普段の利用者が少ない、施設の未来構想に対して具体的なアクションプランがないなど、今後の活動の方向性を模索していた状態でした。

そこでさともんチーム(5名)は団体の事業を継続的発展的に行うことを目的として、マーケティングの基礎調査を実施。活動期間6か月のうち4か月を運営者、利用者、類似NPO、行政担当者などへのヒアリングに費やし、補助金や運営者というリソース不足という課題を洗い出し、その拡充のための施設の指定管理者取得の進め方、目指すべき方向性の提案を提示しました。

プティプリ事業に関わるスタッフの方々からのビデオメッセージでは、「やるべきことが明確になりました。いただいた未来地図をもとに、さらなる発展を目指しています」「本業で忙しい中でも提案ありがとうございます。また遊びに来てください」と温かい声をいただきました。


認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク

ゴールドリボン・ネットワーク

★GNRチーム
発表者:武田倫邦
メンバー:副島秀樹、李恩率、森川智之、福谷莉菜

年間2,000人~2,500人が発症するといわれる小児がん。医療の発達により生存率は向上しているものの、晩期合併症なども多く、就学・就職などの際に困難が生じやすいため長期的なフォローアップの必要があります。認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワークは、そんな小児がんの子どもたちが安心して笑顔で生活できる社会をつくるための様々な活動を行っている団体です。現在は、小児がん経験者とその家族への情報提供や入院時の交通費補助をはじめとした各種支援を主な活動とされていますが、今後さらなる支援活動の拡充を行っていきたいと考えているものの、現状の個人・法人からの寄付金や助成金だけでは運営資金が十分とはいえない現状がありました。

そこでGRNチーム(5名)は、多団体の取り組みの調査からスタートし、SAPジャパンでの経験を活かして標準プロセス(寄付行動プロセス)定義、ヒアリング、デザインシンキング、オンラインワークショップツールを用いたアンケート項目作成、638名もの寄付者へアンケートを実施、SAP アナリティクスクラウドなども活用した分析、そこからの施策提案…と様々なアプローチを実施。最終報告書は88ページという大作となったそうです。

発表者の武田さんは「本業との両立が大変だったものの、仕事での専門知識を活かしながら社会貢献をしている充足感が味わうことができました。また、NPO法人支援向けのSAPソリューション(無償)が提供できたらいいのではないかと考えるに至りました」と報告を締めくくられました。

GRNの方々からは「第三者の立場から見ていただいたこと、さらには寄付者の声を聴くという貴重な機会を得られた。いただいた報告書をもとに改善につなげていきたい」とお声をいただきました。

「サプライズでビデオメッセージをいただき、心からプロボノをやってよかったなと思いました」と武田さんの目にも涙が浮かんでいました。


まとめ

セッション後には、サービスグラント代表の嵯峨生馬さんと、SAPジャパンプロボノ事務局安藤豪さんが登壇。

サービスグラント代表の嵯峨さんより
「昨年、今年と多岐にわたるテーマに関わっていただき、さらにこのような充実した報告をお聞かせいただけて非常に感謝しています。特にSAPさんの凄みを感じるのは、チーム内の特定の方だけではなく、メンバー全員のチームワークと貢献が見られるところです。NPO法人の現場を知っていただき、当事者・関係者にお話を聞いていただいておりますが、現場への想像力を働かせ、提案ができるという本業にもつながるような時間だったのではないでしょうか。今回関わって頂いたNPO法人の課題というのは、様々な団体にも共通するように感じています。普遍的な対応が求められる中、SAPジャパンの持つITの力、そして思考力、課題解決力はいかなる場所でも大きな力を発揮すると実感しました」と評価をいただきました。

プロボノ事務局 安藤さんからは
「サービスグラントさんにご協力いただき、2年で合計6団体、社員計50名ほどで支援してきました。“学び”に加えて、“学び直し”もあったいい機会だったのではないでしょうか。来年も実施すべく準備していますので、その際はぜひ参加いただければ」と呼びかけがありました。

司会進行の大森さんからは
「プロボノの醍醐味は、個人ではなくチームで活動することだと考えます。普段関わらない部署や年次の違う方と繋がることができ、お互いに感謝を伝えあい、今回のように支援団体の方々から感謝のお言葉をいただけるのは何よりのモチベーションになるのではないでしょうか」と締めくくりの言葉をいただきました。

今年度はSAPジャパンの社員18名+事務局2名が参加。コロナ禍のためオンライン中心だったものの、参加体験について全員が良い印象を持ち、「プロボノを他の人に薦めたいと思う」という回答が多く寄せられました。参加の感想としても、「新しい自分の発見、自分の立ち位置を見直す機会」「誰かの役に立つことを実感するもの」「他者を理解しようとする気持ちを持つきっかけ」などポジティブな回答が多く、自分+他者の関りに関して気づきや発見があったようです。

また、支援先団体からは「みなさんの専門知識や技能によって、NPO団体の活動が飛躍した。強力な支援者でした」「未来を一緒に考えてくれる心強い存在、一緒に伴奏していただき心強かったです」「みなさんのおかげでプロジェクトを始動することができました」という声をたくさんいただきました。

 

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