バイオテクノロジーの研究開発 (R&D) は、今最も注目されている高成長産業の 1 つです。パンデミック以降、命を救うワクチンや個別化医療といったヘルスケア業界のブレークスルーの必要性が高まり、製品の「イノベーション・ルネッサンス」に拍車がかかっています。この R&D 主導の分野において、真のイノベーターは市場投入スピードを加速させ、コンプライアンスを強化するためにデジタルトランスフォーメーションを進めています。

その一例が、カナダのライフサイエンス研究をリードするSTEMCELL Technologies 社です。同社は、自社を「科学者を支援する科学者の企業」と位置付けています。バンクーバーに本拠地を置き、幹細胞、免疫学、がん、再生医療、細胞治療研究の分野において、産業界や学術界の科学者たちのイノベーションを支える製品やサービスの開発・製造を手掛け、30 年にわたって成長してきた歴史を持つ企業です。STEMCELL 社は 20 カ国に従業員を擁し、細胞培養培地、細胞分離技術、器具、付属品など、2,500 を超える製品ポートフォリオを常に拡充しながら販売し、教育やサービスも提供しています。次世代の保健医療につながる新しいライフサイエンスを追求するというミッションを掲げる同社にとって、新製品の市場投入にかかる時間を短縮することは極めて重要な課題です。

STEMCELL 社の CIO を務めるジョン・リリーマン (John Lilleyman) 氏は次のように語っています。「私たちは、新製品の市場投入までの時間を短縮し、社内関係者や顧客の進化するニーズに合わせて自社のテクノロジー環境を適応させる方法を常に模索しています。精密医療のような分野での先進的な発見は、患者とその家族に新たな希望をもたらしています。その一方で私たちは、持続可能な包装と製品の安全性に関して厳しさを増すグローバルな法規制を遵守しなくてはなりません」

SAP S/4HANA® によるイノベーションの加速

バイオテクノロジーをリードする STEMCELL 社は、SAP S/4HANA を導入して以来、SAP の最新イノベーションを活用して、製品テストのスピード向上に懸命に取り組んできました。SAP Sapphire & ASUG Annual Conference Orlando のセッションの中で、リリーマン氏は自社の戦略について話してくれました。それは、SAP を活用して、完全に自動化された効果的なソフトウェアを実現するというものです。

RISE with SAP のクラウドファーストのイノベーションには特に期待しています。RISE with SAP によって、私たちはより持続可能なソリューションをお客様に届け、セキュリティやコンプライアンスの要件を継続して満たせるようになると思います。また、RISE with SAP は、今後の成功に不可欠なアップグレードも提供してくれます。新しいテスト自動化戦略が成功すれば、テストがボトルネックになることなく、変革を推し進めることができるはずです」

自動化による厳格な製品テストの迅速化

STEMCELL 社は、エンドユーザーである患者の治療法を開発しているわけではありません。新たな治療法の発見を目指すライフサイエンス研究者たちのイノベーションを支援する製品やソリューションを開発しています。科学者たちを支えるこうしたソリューションを開発するにあたり、同社は U.S. Food and Drug Administration を始めとするグローバルな規制当局の枠組みやガイドラインに準拠した厳格な製品品質テストを実施しています。

手作業で行っていたテストを高度な自動プロセスに置き換えて、同社は大きな成果を上げています。現在までに、GxP「適正基準」ガイドラインおよび規制に対する SAP システムの検証時間を 86%、見積から入金までのシナリオの検証時間を 97% 、完全なリグレッションテストのサイクルタイムを 98%、それぞれ短縮しています。

リリーマン氏は次のように述べています。「これまで 1 カ月以上かかっていたテストの大半が数日以内で完了するようになりました。その結果、ビジネスやチームの取り組みがすさまじい勢いで加速しています。また、SAP ソリューションの機能強化をより早く利用できるようにもなります。このことは、事業を推進し、新しい製品市場や地域で事業を拡大していく中で、毎日、毎週、毎月、そして毎年、メリットをもたらし続けてくれるでしょう」

デジタル化によるグローバル展開の加速

年平均 20% の成長を遂げている STEMCELL 社は、製品のより迅速かつ持続的な市場投入に向け、戦略の中心にデジタル化を据えています。グローバルな法規制に準拠したテストの迅速化は、事業をグローバルに展開する際の基盤になるだろう、とリリーマン氏は言います。

「テストの全工程でクラウドベースの自動化を行うことができれば、絶えず変化する市場においても継続的にコンプライアンスを維持していくことができます。テスト目録を拡大し続け、そして今後、さまざまな環境で始まるプロジェクトを加速できるようになるでしょう。また、テストをエンドツーエンドで行える新しいエンティティを構築するための簡単なチェックリストを備えたライブラリを手にすることができます。私たちは、ビジネスユーザーからテストの負担を取り除き、テストの完了したイノベーションを迅速に公開できるよう支援していきます」

リリーマン氏が見据えているのは、最新のシステムテストや品質管理用のオンデマンドな検証レポートなど、自動化をさらに進めることで得られるより大きな成果でした。STEMCELL 社がテストを迅速化することは、研究者の活動を支援していることにつながります。研究者が必要とするツールを迅速に市場に投入することで、患者に寄り添う先進的な治療法の発見を支え、ひいてはより健康的な世界の実現に貢献しているからです。


スーザン・ガラー (Susan Galer) はコミュニケーションディレクターです。@smgaler のフォローをお願いします。