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SAP SuccessFactors ベンチマークレポート 2023 サマリ版公開 ~3回目の実態調査から見えてきた、日本の人事のトレンドと課題

フィーチャー

私たちSAPジャパン人事・人財ソリューション事業本部では、SAP人事ソリューションの利用実態と日本の人事部門の優先テーマを把握すること、そして得られたデータの分析結果を日本のお客様へのサービス品質向上に役立てることを目的とし、2021 年から国内のユーザー企業に直接アンケート調査を実施しています。第 3 回調査となる 2023 年調査の分析レポートが完成しましたのでサマリ版の内容を公開します。


エグゼクティブサマリ

今回の調査を通じて、日本企業の人事部門が抱える課題や注力しているテーマ、日本のSAP SuccessFactors(以下、サクセスファクターズ)ユーザー企業の特徴や利用効果が明らかとなった。

以下、主要な点を簡単に解説する。

◇ 回答結果から見るトレンド

今回の回答データからは、今日の人事部門に特徴的な関心事や課題感を把握することができた。人事に求められる役割の変化や、企業と従業員の関係性の変化を読み解くことができる結果となった。

  • 人事の役割:適所適材の配置とエンゲージメント、海外のガバナンスなど、人事部門が国内従業員の労務管理を中心とした従来の職責からグローバル事業への貢献へと、自身の役割の重心を変化させてきていることが見られた。
  • 報酬制度:今後の処遇制度において72%の企業が年功的要素を弱めると回答し、69%が個人の職務や役割との関連を強めると回答した。
  • 従業員傾聴の進展:1オン1を実施している企業は全体の65%に上り、従業員サーベイは87%の企業で実施されていた。従業員へのサポートや傾聴が重視されている現状が明らかとなった。

データ抽出とデータ活用における課題感

人事データの抽出と人事データの活用については下記のような課題が見られた。

  • 人事データの抽出が効率的にできていないと感じている企業は全体の52%だった。人事データの抽出の阻害要因としてはデータが複数システムに散在していることを挙げた企業が多かった(62%)。
  • データ抽出の効率化とデータの活用の進展には有意な相関関係があり、データの抽出が効率的にできないことが、意思決定におけるデータの活用を妨げている可能性が明らかとなった。
  • ダイバーシティについて9割以上の企業が公開しているなど人事関連データの外部公開が進んでいるが、データ公開の阻害要因として公開するデータ項目の選定、データ抽出、準備工数を挙げる企業が多かった。

人事施策の効果

自社の人材育成に手ごたえを感じている企業は全体の約3割と寂しい結果となった中、一部の施策を導入している企業で育成に手ごたえを感じている割合が高い傾向があり、施策の効果が出ていると見られた。

  • 1 オン 1 を導入している企業は育成に手ごたえを感じている割合が高い
  • メンター制度を導入している企業は育成に手ごたえを感じている割合が高い
  • 人事の意思決定にデータが活用できている企業は育成に手ごたえを感じている割合が高い
  • メンター制度を導入している企業は登用時点で十分に育成できていると感じている割合が高い

調査概要

調査期間

2023年11月20日~12月15日

調査方法

Qualtricsを利用したオンライン調査票にて回答受付

回答データの集計および分析にもQualtricsを用いた。

対象

日本国内の SAP SuccessFactors(以下、サクセスファクターズ)またはSAP HCMをご契約中のお客様

回答者数・回答者属性

89社89名

お客様企業内でプロジェクトをリードされた方、もしくは企業内でサクセスファクターズ利用状況をよくご存知の方をSAPジャパンにて抽出し、回答を依頼した。


 

1 章「SAP SuccessFactors 利用状況」

SAP SuccessFactors(以下、サクセスファクターズ)の利用企業は6割が複数法人でソリューションを利用し、約4割が1万人以上のデータを管理しており、サクセスファクターズが大企業の人事業務を支えている現状が明らかとなった。

レポート作成やデータの抽出に関しては効率的にできていないという回答が全体の約半数を占め、課題感が明らかとなった。データ抽出の阻害要因としては、全体の6割が必要なデータが複数システムに散在していることを挙げた。一方でデータ抽出が効率的にできている企業は、人事の意思決定においてデータが活用できていると回答する傾向も明らかとなり、データ抽出がデータ活用のボトルネックとなっている状況が明らかとなった。

2 章「人事課題と方針」

2 章の回答を通じて、今日の人事の果たす役割の潮流を垣間見ることができた。注力している人事テーマではコンプライアンス(7%)などを大きく上回り、「適所適材の人材配置と外部採用」(69%)、従業員エンゲージメント(52%)が多数となり、従業員の能力発揮を通じた事業への貢献へと人事の役割が移ってきていることを示している。

海外の人事オペレーションに関しては海外人事と定期的な情報交換を行っている企業が54%、海外子会社に本社から人事担当者を赴任させている企業が48%あった一方、本社人事から海外現地採用の従業員は管理しない企業が49%と方針が二極化しており、人事のグローバル化一辺倒ではなく各社が自社にとっての最適な人事方針を検討している現状が明らかとなった。

3 章「育成」

どのような人材を育成すべきかを明確に職種・職務として定義している企業は全体の2割未満と少数派であった。Career Developmentモジュールの利用率も全体の2割と少なかった。一方で1オン1やメンター制度、データを活用できている企業では育成に手ごたえを感じており、具体的施策に取り組めば成果が出る領域であるとも言える。

重要ポジションについては61%が明確化し、それら重要ポジションに対しては6割の企業が後継者管理を行っているものの、十分な育成・準備ができた登用ができていると回答した企業は10%にとどまった。

4 章「研修」

Learningモジュールは全体の4割が利用していた。研修の提供形態としては、コンテンツを内製したE-Learningを全体の9割弱の企業が実施している一方で、約7割の企業が外部コンテンツの活用も実施してコンテンツの拡充を図っていた。

SAP SuccessFactorsのLearningモジュールを利用している企業では、外部コンテンツを拡充している傾向が見られ、従業員の自発的な学びがより増えているという結果となった。多様なコンテンツを提供することが、従業員の自発的な学習を後押ししていると考えられる。

5 章「評価・報酬」

73%の回答者がPerformance&Goalsモジュールを利用中と回答し、SAP SuccessFactorsで最も使われているモジュールであった。また前年よりも8%増加し、活用いただいている企業が拡大していることが分かった。

今回の調査では、前年同様に従業員の処遇における年功的要素を弱める企業が多数派だったが、年功要素を「弱める」と答えた企業が9%減っている一方で、前年は0%だった年功要素を「強める」と答えた企業が2%存在していた。これまで日本企業が全体として脱年功を意識する傾向があったが、その潮流が頭打ちし、各企業が自社にあった報酬制度を模索し始めている可能性がある。

評価データを処遇や昇格の決定で利用していると回答した企業は約9割に上り、また約6~7割の企業が選抜、人材育成、異動配置で評価データを利用していると回答し、1章で確認した全般的な意思決定の場面でのデータ活用に比べ、割合が高かった。日本企業において評価結果データが、数ある人事データの中で最重視されて活用されてきた実態が見て取れた。

6 章「人事組織管理・給与計算」

Employee Centralモジュールは昨年より多い全体の7割以上の企業で利用されていた。コア人事業務(発令、組織管理など)のシステムとしての利用の増加と、継続的にタレントマネジメント業務の高度化を目的として利用している企業も多いと推察される。

日本企業に取って比較的新しい領域であるジョブ/ポジションの管理をシステム化している企業が4割以上となり、「ジョブ型」的要素の導入とシステムへの落とし込みは引き続き関心事項であることが明らかとなった。

システム化を行っている領域を個別に見ても、システム外作業や手作業が残っていると回答している企業が多く、近年のAI等の先端技術の利用による改善余地があると見込まれる。

システム統合の方針を訪ねる新たな設問では、7割以上が、グループ・グローバルレベルで、ポジション・要員数管理と組織管理のシステム統合を目指しているという回答が見られ、グループ全体での人的資本情報の集約のニーズの急激な高まりが見て取れる。

また、異動・発令管理に関しても4割以上がシステム統合を目指しており、人材情報の源泉となるコア人事システムをグループ統合する動きが多く見られた。一方で、プロジェクトへの公募制度をグループ統合で管理する方向性を持っていたのは2割に満たず、欧米で見られるようなグループ横断のプロジェクトベースでの最適リソース配置のニーズの高まりはまだ見られない。

7 章「従業員エンゲージメント」

87%の企業が従業員満足度調査を実施しており、エンゲージメントサーベイが人事施策の一つとして定着したことがわかる。一方で、退職社員向け調査の実施企業割合が昨年より15%増加したことも興味深い。昨今の人材不足や採用難を背景に、退職者の具体的なフィードバックから退職理由になり得る要因を特定、改善することでリテンションにつなげたい考えが想像される。

360度調査等ある程度定着したサーベイに加え、ダイバーシティ&インクルージョン調査といった新たな形態の調査も登場しており、人事トレンドに沿って取り組むサーベイ内容も柔軟に変更していくことが求められる。

サーベイ結果の活用については、従業員からのフィードバックをもとに全社レベルで改善活動を実施している企業数が昨年よりも増加した。サーベイ結果の分析、人事施策への展開といった改善活動が重要視されるようになってきたことがわかった一方で、改善活動における効果測定の実施についても検証していきたい。


ぜひ、御社の人事変革プロジェクトの起案や業務改善、人事戦略策定にお役立てください。

製品・サービスの継続的な改善のために

今後もSAPジャパン人事・人財ソリューション事業本部では、日本のお客様のニーズに即した継続的なサービス改善を行えるよう、事業本部一同で取り組んでまいりますのでご期待ください。
また、同様の利用実態調査も継続的に実施し利用状況の把握を続けていきたいと思います。
「企業の事業戦略を実現しつづけるための組織づくりをご支援する」 という大目標に向け、人事・人財ソリューション事業本部一同はSAP SuccessFactors導入企業の皆様と伴走し続けてまいります。