(本記事は、7月21日本社で掲載されたものです)

配管システムが気候保護にどう貢献できるのか考えたことはありますか?

ドイツに本社を置く aquatherm 社は、プラント建設や建築サービス用のポリプロピレン配管システムの世界的メーカーです。ポリプロピレンは、そのエコロジー特性と高温・高圧耐性で知られる素材です。

気候保護、グリーンエネルギー、そしてきれいな水。aquatherm 社は、これらすべてを通じて、世界中の生命の自然基盤を守ることに貢献したいと考えています。aquatherm 社が提供する持続可能な製品、包括的サービス、専門知識は、気候ニュートラルな生活への同社のコミットメントの一部です。生産ラインは、冷暖房への接続、冷暖房ネットワーク、飲料水など、さまざまな用途に対応した 6 つのラインで 17,000 品目をカバーしています。

同社は約 500 人の従業員を擁し、強力なパートナーネットワークを通じて 70 カ国で事業を展開しています。

2022 年、aquatherm 社は基幹業務システムとして SAP S/4HANA® Cloud を導入し、レガシーソリューションと統合して生産プロセスを管理してきました。しかし、手作業によるデータ入力に大きく依存していたため、データ品質が低く、ヒューマンエラーの発生リスクが高い状態が続いていました。そこで同社は、製品の需要増と会社の成長に対応するため、最新技術を取り入れることで生産プロセスを最適化することを目指しました。

オペレーションの合理化とプロセスの自動化

aquatherm 社デジタルマニュファクチャリング部門の SAP テクニカルコンサルタント、パトリック・ケラー (Patrick Keller) 氏は次のように語っています。「私たちは、9 つの製造部門と 6 つの生産ラインにまたがるオペレーションを合理化し、手作業による入力を最小限に抑え、インターフェースを削減し、生産現場のパフォーマンスを追跡したいと考えていました。私たちの目的は、機械、作業員、生産エリアの KPI を比較し、機械の稼動状況を可視化することでした。さらに、生産プロセス全体を通じて包括的なトレーサビリティを確立し、あらゆる問題に迅速に対処できるようにしたいと思っていました」

そしてその解決策は、リアルタイムなマシンデータと KPI を使用することで、将来への適応性があり、製造エラーを迅速に排除できる最先端の製造実行システムを導入することでした。「慎重に検討した結果、マシンデータを収集し、プロセスを自動化する SAP Digital Manufacturing を採用することにしました。つまり、当社は可能な限り多くの SAP 製品を活用しようと思っているのです」とケラー氏は説明しました。

SAP Digital Manufacturing は、クラウドソリューションとして提供されている製造実行システム (MES) であり、資源効率に優れたインダストリー 4.0 アプローチを通じて、持続可能でリスクに強い製造オペレーションをサポートします。SAP Digital Manufacturing は、業務システムと生産現場設備をつなぐことで生産プロセスの最適化を支援し、実行、可視化、分析を可能にします。

可視性を向上させる信頼できる唯一の情報源の確立

SAP Digital Manufacturing は現在、生産エリアのひとつに導入されており、機械のパフォーマンスや発生した問題についてのインサイトを aquatherm 社に提供しています。これにより、同社は生産時間など、機械から収集される指標を確認できるようになり、ダウンタイムの削減に役立っています。SAP S/4HANA Cloud は SAP Digital Manufacturing と統合されているため、情報は SAP S/4HANA Cloud から引き出され、SAP Digital Manufacturing から戻されることで、リアルタイムなインサイトの獲得につながり、意思決定力を強化できます。

「このクラウドベースソリューションの魅力的なところは、四半期ごとにソフトウェアのアップデートや新機能が利用できるようになるところです」とケラー氏は語りました。

aquatherm 社が直面した課題のひとつは、規格の異なるさまざまな機械メーカーから、必要かつ正確な機械データを入手することでした。そこで同社は、SAP と SAP パートナーの BA Business Advice GmbH と連携して、各機械に使用する標準機械テンプレートを開発しました。ケラー氏は次のように述べています。「SAP の Fit-to-Standard アプローチを採用することで、カスタム開発を回避し、生産プロセスを大幅に変更することなく、既存プロセスを維持することができました。BA Business Advice 社からサポートを受けて、3 カ月の概念実証の後、わずか 6 カ月で本稼動を開始しました」

aquatherm 社における導入効果は以下のとおりです。

  • 製造オペレーションの一元管理 100% 達成
  • 自動化されたデータ交換により、PC ベースのタスクに費やす時間を 90% 削減し、オペレーターたちが本来の業務に集中できるようにした
  • 製造オペレーションのための信頼できる唯一の情報源を確立し、可視性を大幅に強化
  • 手動プロセスとインターフェースを削減することで、データ品質が向上し、機械オペレーターの作業時間を短縮
  • 主要ステークホルダーに正確なリアルタイムデータを提供し、より透明性の高い生産管理と十分な情報に基づく意思決定を実現
  • 将来の最適化をサポートする強力なデータ分析とAIソリューションの基盤を築き、全体的な生産効率の向上につなげる

全体的な生産効率を高める今後の計画

aquatherm 社は将来を見据えて、このソリューションをすべての生産エリアに展開する計画です。さらに、インサイト向け SAP Digital Manufacturing を利用して、生産業務をより適切に管理し、SAP S/4HANA Cloud と SAP Digital Manufacturing との双方向データ交換を実現し、統合を強化する予定です。また、SAP Analytics Cloud製造コネクタを利用して、SAP Digital Manufacturing と業種別標準データソース間のデータ交換を支援する計画です。

「SAP Digital Manufacturing のおかげで、生産プロセスのデジタル化と自動化が可能になりました。正確なリアルタイムデータによって死角がなくなり、オペレーションを円滑に進めることができるようになりました」とケラー氏は語りました。


カリン・フェント (Karin Fent) は SAP のグローバルカスタマーサクセス・デジタルサプライチェーン担当シニアディレクターです。