(本記事は、5月1日に本社で掲載されたものです)
SAPは、「IDC MarketScape:ワールドワイド炭素会計・管理アプリケーション部門2026年版ベンダー評価」(文書番号:US54117126、2026 年 4 月)において、2度目のリーダーに認定されました。同レポートでは、「SAP の ERP に組み込まれたアプローチにより、財務、業務、サステナビリティに関するデータを統合し、単一の信頼できるデータ基盤を提供する」と評価されています。
本IDC MarketScape では、炭素会計および管理ソリューションを提供するアプリケーションおよびソフトウェアベンダー 17 社が評価対象となりました。評価では、信頼性の高い排出量算定、強固なデータガバナンス、企業・製品・サプライヤーレベルでの可視性、および各種の業界標準に準拠したレポーティングをどの程度支援できているかが検証されました。
SAP は、炭素管理および広範なサステナビリティ管理を ERP のプロセスに直接組み込むことで、サステナビリティを経営の中核として推進する企業に適したソリューションを提供します。このアプローチにより、分断されたスタンドアロン型のツールに起因する非効率性やリスク、不整合を低減するとともに、ガバナンスの効いたトランザクションデータに基づく AI 主導のインサイトを実現します。
今回の認定は、企業全体における炭素データの活用を支援するというSAP のコミットメントが反映されたものと考えています。SAP Sustainability ソリューションは、拡張性のある炭素排出量計算、規制対応のレポーティング、サプライヤーとのコラボレーション、そして脱炭素計画を支援します。同時に、排出量に関するインサイトをビジネスプロセス、投資判断、および日々の業務に直接組み込むことを可能にします。

IDC MarketScape ベンダー分析モデルは、特定市場における ICT サプライヤーの競争力を提供するように設計されています。その調査手法には、定量的かつ定性的な基準に基づいた厳格な採点方法を使用しており、調査結果として、該当市場での各ベンダーの位置付けを 一つのグラフで示しています。能力スコア(Capabilities)は、短期的に見たベンダーの製品、市場開拓能力、事業運営能力を測定したものです。戦略スコア(Strategies)は、3 ~ 5 年の期間における、ベンダー戦略と顧客要求との整合性を測定したものです。ベンダーの市場シェアは、円の大きさで表されます。
堅牢な炭素管理の重要性
サステナビリティは、企業全体の責任であると同時に、戦略的な機会でもあります。組織がリスクを管理し、コストを削減し、パフォーマンスを向上させるためには、炭素排出量を確実に算定・配分し、それに基づいて行動する必要があります。
規制上の要件により、推計値から実測値への移行が求められています。法整備が進み、推計値の使用に罰則が科されるケースが増える中で、保証に対する期待は一層高まっており、データの欠落が財務上の直接的なリスクへと変わりつつあります。現在のサステナビリティ開示には、表計算ソフトでは対応できない財務レベルの証跡が求められています。炭素が利益率やキャッシュ、負債に与える影響が拡大する中で、財務部門は将来の影響を予測し、リスクを統制する手段が求められています。
同時に、経営層は、影響を把握し、優先順位を整合させ、十分な情報に基づく確信ある意思決定を行うために、炭素影響を定量化した単一のビューを必要としています。
この変化は、カーボンプライシングの仕組みを通じてすでに具体化しています。現在本格運用フェーズにあるEUの「炭素国境調整措置 (CBAM)」は、特定の輸入品に対し、その内包排出量に基づいて炭素価格を課す仕組みです。この制度は、公正な競争とより持続可能なグローバル貿易慣行を促進することを目的としています。申告企業は、サプライヤーの実測値、または EU が定めるデフォルト値のいずれかを用いて報告できます。しかし、デフォルト値への依存は時間の経過とともにコスト増を招く可能性があり、実測データへの移行は、リスクを軽減し、コストを抑えるとともに、欧州市場での取引を継続するための重要な要因となります。
規制当局が要件をより明確化し、炭素に直接的な価格を付与する中で、排出量は測定可能な財務リスクとして位置付けられています。企業は、財務報告と同様の規律、統制、および保証を適用し、排出量の定量化においても同等の厳格性を確保する必要があります。
SAP、炭素管理における財務レベルの厳格性を適用
排出量の算定のみを目的としたポイントソリューションとは異なり、SAP® Green Ledgerソリューションは、炭素会計の基盤として機能します。本ソリューションは、複式簿記などの会計原則を炭素排出量に適用することで、炭素データに構造、統制、およびトレーサビリティをもたらします。SAP® Business Technology Platform(SAP BTP)を通じてクラウドERPの財務機能とネイティブに統合されており、企業は財務会計と同等の厳格性と規律で、炭素排出量のインポート、計上、配分、および分析を行うことが可能になります。
ERPを中核とする組織にとって、SAP Green Ledgerは、財務管理で確立された厳格な仕組みを規制対象となる非財務領域へと拡張することを可能にします。これにより、データの整合性と監査可能性が強化され、保証対応が可能なレポーティングを支援するとともに、企業全体で一貫した炭素データ基盤を構築することができます。
その結果、組織はコンプライアンスコストと規制リスクを低減し、サステナビリティをコストセンターや財務プロセスに組み込むことで、より優れた意思決定を支える明確なインサイトを得ることができます。ネイティブ統合により、このアプローチは信頼性と拡張性を兼ね備え、炭素を企業パフォーマンスの中核要素として統制・管理し、具体的なアクションにつなげることが可能になります。
将来を見据えた炭素エコシステム
堅牢なビジネスを営む企業は、ERP システムを基盤とした強力な統制、照合、および監査証跡を通じて財務を管理しています。つい最近まで、炭素排出量はこのシステムの枠外に存在し、統制された経営要素(ビジネス変数)ではなく、単なるサステナビリティの指標として扱われてきました。このギャップを埋めるには、財務を主軸に据え、炭素計算、データ交換、そして会計をつなぐエコシステムが必要です。IDC は、「優れたアプリケーション、より豊富なデータ、および高度な AI を組み合わせた 3 層のアプローチにより、企業はサステナビリティへの取り組みを単に記録し報告するだけでなく、データに基づいた意思決定と行動を可能にする」と述べています。
SAPは、組織の成熟度に応じて柔軟に適応可能なERPネイティブでモジュール型のアプローチを通じて、これを支援します。企業はまず、一次データを活用して、信頼性の高い組織レベルおよび製品レベルのカーボンフットプリントを算定することから始められます。次に、それらの排出量を財務システムに取り込むことで、金額価値と同様の統制のもとで、炭素の計上、配分、および管理を行うことが可能になります。
要件が高度化するにつれて、このエコシステムはサプライヤーデータの連携、企業間の連結、高度な分析、そしてシナリオモデリングへと拡張されます。これにより、企業は炭素をコスト、パフォーマンス、および経営計画と結び付けて管理できるようになります。サステナビリティに関する報告および開示は、この基盤の上で、すでに企業システムに組み込まれた統制された監査可能なデータを活用して実現されます。
SAP は、炭素管理のライフサイクル全体で AI を活用することで、排出係数のマッピングおよび拡充を支援し、ESG レポート作成を効率化するとともに、大規模な炭素データの分析を可能にします。これにより、統制の強化、迅速なレポーティング、そして、より確かな情報に基づいた財務上の意思決定が実現します。
炭素管理を財務へと統合するという極めて重要な一歩を踏み出す中で、企業にとってこれは大きな転換点となっています。SAP は、進化し続ける規制への準拠を支援し、厳格なパフォーマンス管理を可能にする ERP 統合型炭素台帳の提供に引き続きコミットしています。企業が十分な情報に基づく意思決定を行い、持続可能で長期的な成長の実現を支援します。


