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1対1で対話をすることである「1on1」は社内のコミュニケーション手法として広く認知されるようになりました。
本稿を読んでいる方の中にも、上司もしくは部下として1on1を実施している、または、1on1制度を運営・社内展開する側で関わっている、という方がいると思いますが、あなた自身は1on1を有効活用できていますでしょうか。会社全体としてはうまく運用できていますでしょうか。
1on1実施の目的はさまざまありますが、本稿では「個人及び組織全体のパフォーマンス向上に貢献するための1on1」についての考え方を紹介します。

X社の1on1の取り組み

X社では、今年度から「ナンバーワン・ワンオンワン」制度という新しい取り組みをはじめました。これは社長の肝いり案件で、今年度からはじまる中期経営計画でも、「上司・部下の対話である1on1ミーティングを頻度高く実施することで、個人及び組織全体のパフォーマンスを向上させる」ということを明記しています。

・・・ 「ナンバーワン・ワンオンワン」制度がはじまって半年がたちました。以下は、X社のマネージャ(上司)たちのコメントです。

「1on1では雑談しかしていませんよ。でも、そのおかげで部下ととても仲良くなれて満足しています。」

「人事制度と関連づけると堅苦しくなるので、年間の組織・個人目標とは切り離して、今取り組んでいる業務の話をしています。」

「チームミーティングをしているし、毎回1on1で話すことなんてないんだよねー。人事がやれっていうから一応実施だけはしているけど。」

「期末に1on1の内容をふりかえるために、大変だけれども対話内容はすべて記録に残すようにしています。」

「部下との対話の時間、その瞬間を共有することが重要なので、記録なんかとっていませんよ。」

「1on1をしていれば、目標管理制度なんていらないんじゃないかな。あれってただの儀式のようなものだし。」

X社の「ナンバーワン・ワンオンワン」制度は、個人及び組織全体のパフォーマンスを向上させる目的ではじめたものですが、上記のマネージャたちのコメントから判断して有効に機能しているといえるでしょうか。うまくいっていないとしたらどのようなことなのでしょうか。

“ワンオンワン”ってものを始めてみたのだけれど・・・

昨今、1on1をはじめたという会社が増えてきました。1on1を推進する人事部門は「うちも1on1をやってるんですよ!」と自信をもって話してくれるのですが、実態としては以下のようなことになっている会社も少なくないようです。

  • 上司は部下と何を話していいかわからない。わからないからとりあえず一方的に話し続けて時間を使いきる。または、とにかく報告させる。
  • 部下一人ひとりと時間をとるのが大変なので、リスケ・キャンセルが頻発している。そして実施することがだんだん忘れ去られる。または、いつのまにかチームミーティングで代替される。
  • 上司も部下も”やらされ感たっぷり”で実施している。
  • 上司も部下も楽しんで実施しているようであるが、部下個人や組織全体のパフォーマンス向上に貢献しているように思えない。
  • 1on1の中で、短期間に達成することやその活動へのフィードバックがなされるようになったのだが、その反面、目標管理制度・年次評価制度の形骸化が際立ってしまった。

など

パフォーマンスの向上に貢献する1on1とは・・・

1on1の目的はさまざまなので、とにかく仲良くなるだけでよい、上司・部下の距離を縮めたいという目的であってもよいと思います。その場合は雑談100%でも、ハラスメントに抵触しなければプライベートな会話中心でもよいと思います。 しかし、X社の「ナンバーワン・ワンオンワン」制度のように、個人及び組織のパフォーマンス向上に貢献することが目的である場合は、仲良くなるだけではない工夫が必要となります。 ここで使われている「パフォーマンス」とは、個人や組織の業績です。営業部門であれば組織や個人の目標数値が明確であることが多いですし、人事部門のような間接部門でも、経営に貢献するための目標を定量的または定性的にもっているはずです。ですので、これらの目標を達成するための相談やフィードバックがあると、パフォーマンスの向上に貢献する1on1に近づけそうです。  

目標によってパフォーマンスを向上させる・経営に貢献する

個人及び組織のパフォーマンス向上に貢献するための前提として、どのくらいのパフォーマンスを発揮することを目指すか、または求められているか、を目標として設定しておくことが重要です。目指すべきことが整理されていると、それを達成するための対話もしやすくなります。つまり、自身が立てた目標と紐づけて1on1を実施することでパフォーマンスを向上させる、経営に貢献するということです。まとめると「目標による経営・マネジメント」。英語にするとManagement by Objectives (and Self Control)。MBO。。。 少し誘導的な説明になりましたが、人事評価制度で取り入れられることが多い目標管理制度とつながりました。  

MBOは「ださい」という人もいるけれども・・・

目標管理制度と1on1は相性がよいのです。個人の目標は、達成することで組織や経営に貢献できるはずなので、1on1でその達成確度をあげるための活動の相談やフィードバックをすることがパフォーマンス向上に貢献します。 もしここで、「目標を達成しても組織や経営に貢献しないと思う。実際にパフォーマンスがあがっていない。」、「目標の内容と日々実施すべき活動は整合しない。」と思われた場合は、目標の立て方が誤っている、制度自体が既に腐っている可能性があるため、1on1以前に見直さなければいけないことがありそうです。人事領域でさまざまな新しい考え方や制度の話が出てくることが多いからなのか、「MBOや目標管理制度は古い。ださい。」ということを聞くことがたまにあるのですが、仕組みを解釈して、適切に自社の制度に組み込むことができれば、有効に機能させることができます。   本稿では少し目標管理に偏って1on1を紹介しましたが、もちろん1on1はパフォーマンス向上以外の目的にも有効です。上司・部下のコミュニケーション強化、中長期のキャリア形成の相談・助言、業務負荷・メンタル面の把握など、さまざまな目的をまとめて実施することもできます。SAP社でもこれらのさまざまな目的を合わせた1on1である「SAP Talk」を実施しています。SAP Talkのことを聞きたいという方がいましたら是非お声かけください。

自社の1on1に課題感を感じられている方、これから1on1制度をはじめようとしている方向けに

23年1月19日(木)に、パフォーマンス向上のための1on1における陥りがちな事例とその原因、効率的な活用方法を紹介するウェビナーを開催します。
参加者からのご質問もリアルタイムで受け付けますので、みなさまが感じられている課題や質問にもできる限り回答いたします。
また、参加いただいた方にはもれなく、「1on1はじめ方ガイド」も提供いたします。

【開催概要】 SAP SuccessFactors オンラインセミナー 従業員の成長につなげるワンオンワンの達人へ! ~X社の場合~
開催日時:2023年1月19日(木) 11:00~12:00(※終了しました)
参加費:無料(事前登録制)
形式:オンライン(Zoomウェビナー)
主催:SAPジャパン株式会社

セミナーの内容は以下記事でも紹介しています。
従業員の成長につなげるワンオンワンの達人へ! ~X社の場合~
 (第1回第2回第3回)

 

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