(本記事は、6月29日に本社で掲載されたものです)
従業員に関するインサイトは、実際に意思決定に活用されていますか。 それとも、ダッシュボード上に留まっているだけでしょうか。 OMVは、SAP® Business Data Cloud (SAP BDC) のピープルインテリジェンスのソリューションを活用し、従業員構成のパターンを把握するとともに、必要とされる領域へ人材を配置しています。 今後、同社はワークフォースプランニングやラーニングアナリティクスへと活用を拡大し、人材への投資を、より測定可能なビジネス成果に結び付けていく計画です。
OMVは、オーストリア・ウィーンに本社を置き、石油、ガス、化学分野で事業を展開する多国籍企業です。欧州、中東、アフリカ、ニュージーランド、ノルウェーにわたり事業を展開し、グローバルに活動しています。
エネルギー業界の多くの企業と同様に、OMVも現在、大きな戦略転換の途上にあります。同社はサステナビリティ分野への投資を加速しており、プラスチック廃棄物を再び石油へと変換する技術の開発に加え、製油所向け原料を生産する欧州最大級の廃棄物分別施設の建設や、航空機から回収されたプラスチックカップを持続可能な航空燃料へとリサイクルする取り組みなどを進めています。こうしたビジネスモデルの転換は、社内にもそれに対応した変革をもたらしており、その中でも最も顕著に表れているのが人事部門です。
OMVのPeople and Culture(P&C)部門は、企業変革の中心に人材を据える戦略的プログラムを立ち上げました。その目標は明確です。グローバルなHRのセンター・オブ・エクセレンスとなり、サービス品質を向上させ、プロセスの標準化と調和を推進するとともに、デジタル化、自動化、セルフサービス化へと大きく舵を切ることです。
課題:分断されたデータと手作業によるレポーティングプロセス
SAP BDCの導入以前、OMVの人事データ環境は、複数のシステムが継ぎはぎのように構成された分断状態にありました。これらのシステムは、ワークフォースのレポーティングや分析を連携して行うことを前提に設計されたものではありませんでした。従業員データは、2つのオンプレミス型SAP® HCMシステムとSAP SuccessFactors® HCMに加え、Microsoft ExcelやSharePoint、さらに本来は財務連結のために構築されたものの、P&C部門が人員レポーティングや計画に活用していたシステムにまで分散して存在していました。
こうした状況が日常業務に及ぼす影響は大きなものでした。事業部門の責任者や部門マネージャーが、ワークフォース関連のKPI(人員数や離職率、あるいはシステムで標準的に提供されるレポートでは得られないデータ)を必要とする場合、その都度HRビジネスパートナー(HRBP)に依頼する必要がありました。依頼を受けたHRBPは、複数のシステムを行き来しながら手作業でデータを抽出し、スプレッドシートに集約したうえで、さらにプレゼンテーション形式に整えてからマネージャーに提供していました。このプロセスは時間を要するだけでなく、ミスも発生しやすく、本来は戦略的業務に充てるべきHRのリソースを消費していました。さらに、マネージャー自身が自部門の従業員データに直接アクセスできるセルフサービスの仕組みも整っていませんでした。
SAP Business Data Cloudとピープルインテリジェンスの採用
OMVのSAP財務・人事・レポーティングを統括するベルンハルト・グレイザー(Bernhard Graser)氏は、次のように述べています。「通常、当社では新しいソリューションをいち早く導入することはありません。しかし、SAP BDCに関しては例外でした。私たちはその可能性をすぐに見抜き、人事およびSAPデータが外部へ流出するのを防ぎ、SAPのエコシステム内にしっかりと保持したいと考えたのです」
そのタイミングは好都合でした。OMVはすでにSAP SuccessFactors HCMの大規模な導入を完了しており、SAP SuccessFactors® Performance & Goals、SAP SuccessFactors® Learning、SAP SuccessFactors® Succession & Developmentを展開済みでした。さらに2023年には、SAP SuccessFactors® Employee Central、SAP SuccessFactors® Compensation、SAP SuccessFactors® Recruitingの本稼働を開始しており、コアとなる従業員データはクラウド型のSaaSに集約され、SAP BDCと連携するための基盤はすでに整っていたのです。
OMVによるSAP Business Data Cloudとピープルインテリジェンスの導入
OMVは、SAP BDCの導入を3つのステップで進めています。
最初のステップであるピープルインテリジェンスの本稼働では、SAP SuccessFactors HCMとSAP BDCを接続しました。ただし、このプロセスは完全にスムーズに進んだわけではありません。OMVは、オンプレミス型のSAP HCMシステムがSAP SuccessFactors HCMとは異なるIdentity Authenticationサービス上で運用されていることに気付き、統合を進める前にこれらを整合させる必要がありました。
より本質的な課題は、データガバナンスでした。オーストリア企業であり、労働評議会を有するOMVにとって、すべての人事データを単純にSAP BDCへ移行することはできませんでした。そこで同社は、データマスキングの実装、Read Access Loggingの設定に加え、SAP SuccessFactors HCMと完全に一致する権限管理を構築しました。これにより、ユーザーはSAP SuccessFactors HCMですでに閲覧が許可されているデータのみを、SAP BDC上でも参照できるようになっています。このレベルのデータガバナンスは、ビジネスユーザーがシステムを利用するための前提条件となっていました。
現在進行中である第2のステップは、2つのオンプレミス型HCMシステムをSAP S/4HANA®へ移行することです。この移行が完了すると、SAP S/4HANAはSAP BDCに直接接続されるようになります。これにより、SAP SuccessFactors HCMとSAP S/4HANAの双方から、単一のプラットフォームに統合されたデータフィードが実現します。
近い将来に予定されている第3のステップは、レガシーのレポーティング基盤を完全に廃止することです。これにより、スプレッドシートを排除するとともに、現在、財務連結システムで行われている暫定的な対応をSAP BDCに置き換え、人事のレポーティングおよび計画のための単一の基盤として位置付けることを目指しています。
SAP BDCのアーキテクチャは、この意思決定において重要な役割を果たしました。SAPが提供し、維持・更新する事前構築済みのデータモデルであるSAP管理データプロダクトは、特に高く評価されました。OMVがSAP SuccessFactors HCMの設定を標準に近い形で運用していたことから、同社の人事データのより多くをSAP管理データプロダクトを通じて提供できるようになり、社内でのメンテナンス負荷の軽減につながっています。また、ソースシステムやデータ定義に変更が生じた場合でも、データモデルの更新はOMVではなくSAPの責任で行われます。
現在および将来のユースケース
OMVは、ピープルインテリジェンスで利用可能なインテリジェントコンテンツを評価した結果、まずワークフォース構成に関するインサイトの活用から開始することを決定しました。この機能はすでに本番稼働しており、人員数、ワークフォース構造、従業員構成に関する標準ダッシュボードを提供しています。これらのダッシュボードは完全に設定可能で、ビジネスユーザーが自在にフィルタリングして活用できるようになっています。
この基盤が整ったことで、OMVのP&Cチームは、SAP BDC上で次に何を構築するかについて、積極的にアイデアを収集しています。業務面では、ワークフォースKPIとして事故関連データの追跡、全社における未充足ポジションの把握、採用までのリードタイムの測定を目指しています。多様性も重要な優先事項であり、現在は複数のシステムに分散している関連データの統合に取り組んでいます。さらに、SAPのフォワード・デプロイド・エンジニアリングプログラムへの参画を通じて、研修および資格コンプライアンスに関するユースケースの共同構築も進めています。これは、従業員が運用サイトに立ち入るために有効な安全資格の保持が求められる製油所環境において、事業運営上非常に重要な要件です。また、スキルや人員数(FTE)に関するユースケースの整備も進めています。さらに将来的には、SAP BDCのSAP® Databricks機能を活用し、機械学習や予測モデリングへと展開する計画です。これにより、人材需要を予測し、スキルやFTEのギャップを顕在化する前に特定できるようになります。
要点
方向性は明確です。人事データの単一の信頼できる情報源を確立し、すべてのマネージャーおよび事業部門責任者がセルフサービスでアクセスできる環境を実現するとともに、現在の記述的なレポーティングから、将来的には予測に基づくワークフォースインテリジェンスへと発展可能なプラットフォームを構築することです。グレイザー氏は、マドリードで開催されたSAP® Sapphire® のセッションの最後に、次のように述べています。「私たちはSAP BDCに大きな可能性を見出しています。人事にとどまらず、財務の分野においても同様です。ぜひ一度試してみてください」
ピープルインテリジェンスに関する詳細情報は、こちらをご覧ください。


