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smart Europe 社、自動車ドライバーにハイパーパーソナライズされたカスタマージャーニーを提案

フィーチャー

smart Europe 社は、新しい eコマースプラットフォームとデジタルツインテクノロジーにより、自社のビジネスモデルを顧客のニーズに合わせ、オンラインによる自動車の直接販売を行う自動車ブランドの先頭に立っています。 

今日の消費者は、ストリーミングサービスであれ、携帯電話であれ、ロボット芝刈り機であれ、ハイテク製品やサービスをオンラインで購入できるという利便性を、ことのほか評価しています。ほんの数回マウスをクリックするだけで、製品を設定し、購入するか、リースするか、サブスクリプションサービスに加入するかを、自身の好みに応じて選択できるのです。 

ところが、これが新車の購入となると事情は異なります。Deloitte 社の調査によれば、消費者の 4 人に 3 人は依然として正規のカーディーラーでの購入を望んでいます。しかしながら、バーチャルな購入プロセスが持つ利点への評価が高まっていることも明らかになりました。消費者は、携帯電話を新たに購入するかのように新車を購入できるようになればと考えているのです。 

「私たちは、車を『体感』し、試乗するために実店舗を訪れる人は、これからも存在するだろうと想定しています」と、smart Europe 社の CXO 兼執行役員であるビョルン・シック (Björn Schick) 氏は説明します。「ですが、こうした人々が少数派となり、より多くの人々がオンラインで、簡単な数ステップを踏むだけで車を構成設定し、注文するようになるまで、それほど時間はかからないでしょう。」 

消費者直接取引 (D2C) の自動車販売が好調 

シック氏によれば、これがどの時点で実現するかは、適切で魅力的なオファーが利用できるかどうかに大きく左右されます。透明性の高い条件で、有利な短期リース契約やサブスクリプション契約が利用できるのであれば、オンラインで契約することに前向きな姿勢を示す顧客が増えています。そして、車種や車体の色についても、より思い切った選択をする傾向にあります。 

「あえて、よりスポーティーな車種や鮮やかな黄色の塗装を選ぶこともあるでしょう」とシック氏は言います。「これは、契約終了時の車のリセールバリューではなく、顧客の好みが重視されているためです」 

今日の市場プレイヤーの多くは、既存の企業も新規に参入した企業も、消費者習慣のこのような変化の背後にあるビジネスチャンスを、十分に認識しています。こうした企業は、急成長を続ける D2C 自動車市場のシェアを獲得するべく、オンラインチャネルへと割って入りつつあります。電気自動車のパイオニアである Tesla と並んで、NIO Polestar などのブランドが道筋を示しており、世界中の自動車メーカーがこれに追随しています。 

単一の eコマースプラットフォーム上での直接販売 

smart Europe 社もまた、ここでの自社の新車ビジネスに力強い可能性を見出しており、それに応じて全社的なインフラを調整しています。smart Europe 社は、ドイツを象徴する自動車メーカーであり、同社の smart ブランドを譲渡した Mercedes-Benz 社と、中国の自動車メーカーである吉利汽車が 2019 年に設立した合弁会社です。この合弁会社の目的は、気候変動に対する意識が高く、都市に居住し、習慣的にオンラインの世界になじんでいる消費者向けに、新しい eコマースプラットフォーム上で全電動の smart 車を提供することです。 

「私たちのビジネスモデルは、消費者との直接取引に基づくものです。オムニチャネルアプローチを通じて消費者に対応することで、当社の車を単一のプラットフォーム上で、バーチャルにも物理的にも販売することができます」と、シック氏は説明します。 

カーディーラーもまた、このビジネスモデルの一翼を担っています。「私たちはディーラーを、販売戦略における重要な要素だと考えていますディーラーの役割は変わりつつありますが、その重要性は以前と同様です。新しく設立された会社として、私たちはディーラーモデルを刷新し、再調整する機会を得たのです」とシック氏は語ります。ディーラーはもはや自ら車を所有して販売するのではなく、物理的な小売タッチポイントにおける(共同)顧客向けのブランドアンバサダーとして、また販売やサービスのパートナーとして、機能することになります。ディーラーが試乗の手配を行い、新しいオーナーに車を引き渡し、特定の顧客層をターゲットにしたイベントに顧客を招待します。つまり、現在のようなカーディーラーは、今後は主に販売拠点としてではなく、ブランドを紹介する代理店として機能するようになるのです。 

smart Europe 社のプロセスを支える SAP Commerce Cloud  

この革新的な協力スタイルの基盤となっているのは、smart の新しい eコマースプラットフォームです。このプラットフォームには、smart Europe 社の従業員とディーラーだけでなく、例えば修理店からもアクセスできます。それぞれが、アクセスされることに顧客が同意したデータを見ることができます。この新たなプラットフォームは 2022 年末、最初の新型 smart #1 の発売と同時に運用が開始される予定です。 

このプラットフォームの中核を成すのが SAP Commerce Cloud です。このプラットフォーム上で製品の設定から決済まで、smart Europe 社のすべての eコマース取引が行われます。「SAP Commerce Cloud によって、各国固有の税制上や法務上の要件をすべてマッピングすることができ、単一のプラットフォーム上で、ヨーロッパ全土でのビジネスのプロセスをすべて管理できます」とシック氏は語っています。 

SAP Customer Data Cloud と組み合わせることで、SAP Commerce Cloud はフロントエンドで高度にパーソナライズされたコンテンツを提供する上でも、重要な役割を果たします。2 つのソリューションが統合されると、国や顧客セグメントごとに所定のパラメーターに対する関連データがプッシュ送信されるためです。つまり、この新たな eコマースプラットフォームでは、スポーツ好きで冒険心に満ち、デザインへの審美眼が優れた人と、例えば「情報を追い求める人」のように異なる心理学的プロファイルを持つ人とでは、異なるコンテンツやジャーニーを目にすることになります。 

正確かつセキュアな同意管理の組み込み 

SAP Customer Data Cloud SAP Commerce Cloud は、顧客を認証および検証し、顧客の同意を管理するための基幹を形成しています。SAP Customer Identity and Access Management ソリューションにより、顧客に連絡をすることや個人データを処理することに関する顧客の同意表明が、すべて正確かつセキュアに、そして最も重要な点として、GDPREU 一般データ保護規則に準拠して取り扱われるようになります。 

SAP Customer Data Cloud の大きな利点は、すべての顧客データを一元的に記録できることです。これには、あらゆるタッチポイントで smart の顧客を識別する個人用の「smart ID」のような従来からあるデータや、関連する製品データも含まれます。デジタルキーは、こうしたデータの利用方法の一例です。全電動の smart 車のオーナーは、車の操作にデジタルキーを選択することができ、アプリを介して友人とキーを共有することさえできます。車両ロック機構、データ転送への同意などは、一元プラットフォーム上で管理されます。 

「このことは、新たなプラットフォームがマーケティングや販売のツール以上のものであることを示しています」とシック氏は語ります。「事実上、製品の一部なのです」 

あらゆる角度からの見通しが向上し、新たなビジネスモデルをサポート 

より多くの製品データが SAP Digital Vehicle Hub アプリケーションから提供され、あらゆる smart 車のデジタルツインとして機能します。このアプリケーションは、車両に関する技術データが含まれるだけでなく、交換が必要な消耗部品や、ドライバーの挙動に関する洞察も提供します。顧客データと製品データはそれぞれ、その対象に関する全貌を明らかにするものですが、この 2 つのレイヤーをつなげることで、顧客とその顧客が所有する車両の両方について、あらゆる角度から見通すことができます。これにより、新たなデジタルサービス、製品の向上、パーソナライズされた顧客向けオファリングの数々に向けた扉が開かれることになります。 

「このような機会が見えているため、SAP との協働は特に魅力的なものとなります私たちはイノベーションの旅の途上にあり、今後ソリューションによって他にどのようなことを実現できるかについて、SAP と緊密にやり取りしています」と、シック氏は述べています。smart Europe 社の目標は、自動車に関連するあらゆるサービスのニーズに対して、ターゲットとなる市場で、街における相棒になるというビジョンを達成することです。 

「私たちのモットーは『やってみて、学び、調整して、繰り返す!』です」と、シック氏は語ります。「これを胸に刻んで、私たちは目的地までの道を着実に歩み続けます。ただし、必要となればいつでも、路線を変更する心づもりがあります」